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ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページ――。

メジャーリーグ全体で加速する球速
現代の野球において、投手の「球速」はかつてない領域へと突入しています。
2026年4月現在のデータを見ると、メジャーリーグ全体におけるフォーシーム(直球)の平均球速は94.6マイル(約152.2キロ)を記録。データ計測が本格化した2008年の平均が91.9マイル(約147.9キロ)であったことを踏まえれば、この約20年弱でリーグ全体の基準がいかに底上げされたかが分かります。
この傾向は直球にとどまりません。シンカー(沈む速球)の平均も、2008年の90.7マイルから今季は93.9マイル(約151.1キロ)へと上昇。かつての「剛速球」は、いまや「平均」と見なされるのですから驚きです。
もちろん、投球の価値はスピードだけで決まるものではありません。しかし、打者の反応時間を奪う圧倒的な球速が、現代野球において最大の武器の一つであることは揺るぎない事実。
MLB公式サイトの最新記事では「2026年に球速をさらに進化させた6人の投手」を特集しました。今回はその中から、驚異的なブースト(加速)を見せている2人の日本人投手に焦点を当て、その変化の正体に迫ります。
(※ 以下の成績やデータは、現地時間2026年4月6日までのものです)
2026年MLB:今シーズン、球速を上げている投手たち
冒頭で触れたように、2008年にPITCHf/xによるデータ計測が開始されて以来、マウンド上の出力は劇的な進化を遂げてきました。
席巻する「スピード」の潮流
| 球種 | 2008年平均 | 2026年平均 | 変化 (単位: km/h) |
|---|---|---|---|
| 4シーム(直球) | 91.9 mph(約147.9キロ) | 94.6 mph(約152.2キロ) | +4.3キロの向上 |
| シンカー | 90.7 mph(約146.0キロ) | 93.9 mph(約151.1キロ) | +5.1キロの向上 |
平均球速が20年足らずで4〜5キロも向上しているというのは、野球界の歴史で見ても驚くべき変化です。
特にシンカーの上昇幅(+5.1km/h)がフォーシーム(+4.3km/h)を上回っている事実は、単なる身体能力の向上にとどまらず、打者の手元で変化する「動くボール」の高速化がより顕著に進んでいることを物語っています。
今永 昇太(シカゴ・カブス)
Embed from Getty Images 2026年
Chicago Cubs Photo Day
2026年 フォーシーム平均球速
92.2マイル(約148.4キロ) 昨年比 +1.4マイル
カブスの左腕、今永昇太投手にとって、昨シーズン(2025年)は試練の年だったと言えます。左ハムストリングの負傷で約2ヶ月の離脱を余儀なくされ、復帰後も本来のボールの勢いを取り戻すのに苦労していました。
2025年シーズンの最後の17試合において、彼のフォーシームの平均球速は90.7マイル。これは、ルーキーイヤーだった2024年の平均球速と比較すると、およそ1マイル(約1.6キロ)も遅い数字です。
巧みな投球術を持つ同投手にとって球速だけが命綱ではありませんが、球速低下が不振の一因となったことは否めません。実のところ、昨年のフォーシームは彼にとって最も通用しない球種となっていました。
しかし、2026年の今永投手は違います。春季キャンプ(スプリングトレーニング)で平均92.5マイルを記録した好調さを、そのままレギュラーシーズンに持ち込んでいるのです。

その変化は数字にはっきりと表れています。
今シーズンは、93マイル(約149.7キロ)を超えるボールを12球投げていますが、昨年1年間で投げた93マイル超えのボールが合計で13球だったことを考えると、まさに劇的な変化です。
直近のガーディアンズ戦では、5回の時点でも平均92.6マイルを維持しており、これは試合の初回と同じ水準。
今永投手自身も春の時点で、こう語っていました。
「僕にとって球速がすべてではありませんが、速さがあることは明らかにアドバンテージになります」
球速が戻ったことは、彼が健康を取り戻したという証拠でもあり、単にボールが速くなったという以上の意味を持ちます。

このオフシーズンは、下半身の強化とフォームの修正に熱心に取り組み、怪我の影響で乱れてしまったメカニクスを見直し、2年前に匹敵するボールの動きを取り戻しつつある今永投手。
チーム事情を見ても、他の主力投手に怪我が相次いでいる今、カブスは彼にオールスター級の活躍を求めています。本来の速球が戻ってきたことは、チームにとっても非常に明るい材料となっているでしょう。
千賀 滉大(ニューヨーク・メッツ)
Embed from Getty Images 2026年
New York Mets Photo Day
2026年 フォーシーム平均球速
96.7マイル(約155.6キロ) 昨年比 +2.0マイル
メッツの右腕、千賀滉大投手にとっても、今シーズンは ”証明すべきこと” が多い一年です。昨年の9月、チームが激しい優勝争いをしている最中にマイナー降格を経験するという悔しい思いをしたからです。
しかし本来の千賀投手は、疑いようのないエース級の力を持っています。
33歳を迎えた彼は、この春のキャンプで周囲を驚かせるような素晴らしい投球を見せました。それはまさに2023年にオールスターに選ばれた時の姿を彷彿とさせるものだったのです。
復活の兆しは、開幕直後の素晴らしい球速データにも表れています。今永投手と同様、千賀投手も2025年は直球に苦しみました。被打率は.281、長打率は.547と打たれ込み、フォーシームは彼にとって最も効果の薄い球種となっていました。

ところが今年、メジャー全体で見てもトップクラスの「球速アップ」を実現させます。
今季の初登板では、フォーシームの平均球速が97.4マイル(約156.8キロ)をマーク。これは彼がメジャーで投げた試合の中で、単一試合としては最も速い平均球速でした。続く2戦目では96.0マイルに少し落ちましたが、それでも昨年のどの試合の平均球速よりも速い数字。
これまで故障に悩まされることも多かった千賀投手ですが、現在の姿は健康そのものに見えます。
彼の代名詞といえば、消える魔球 ”ゴーストフォーク” ですが、このボールは威力のある直球があってこそ生きてきます。高めの強い直球と、低めに落ちるフォークボールのコンビネーションが機能してこそ、千賀投手の真価が発揮されるのです。

実際、その効果は出始めています。今シーズン、フォーシームだけですでに7つの三振を奪っており、昨季1年間で直球による三振がわずか15個だったことを思えば、見違えるような変化です。
相手打者は、その直球に対して15打数2安打と抑え込まれ、空振り率も28.9%を記録。昨シーズンには欠けていたボールの勢いが、完全に戻ってきているのです。
2026年MLB:数字が示す「復活」の予感

今永昇太と千賀滉大。MLB公式サイトが注目した両投手の進化を、改めて整理してみましょう。
- 今永昇太(カブス):
下半身の粘りを取り戻したことで、フォーシームの平均球速が92.2マイル(前年比+1.4)へ向上。球質のデータも新人王を争った2024年の水準へと回帰しており、カブスのローテーションを支える「完全復活」をマウンドで証明しています。
- 千賀滉大(メッツ):
自己最速を更新する平均96.7マイル(前年比+2.0)を計測。今季2戦目では、最低出力のボールですら前年の最高値を上回るという圧倒的な出力を披露しました。剛腕としての輝きを取り戻し、メッツのエースへ返り咲く準備は整っています。
二人に共通しているのは、単にスピードガンの数字が上がったということだけではありません。その向上は、彼らが昨季の怪我や不調という苦境を乗り越え、再び ”戦える体” を作り上げた結果です。つまり、球速の回復と徹底した健康管理の両輪が、いま完璧に噛み合い始めているのです。
さらに、両者とも球種ごとの高低のブレ(コマンド)を修正したことで、打者の芯を外す「キレ」を研ぎ澄ませました。直球による奪三振率と空振り率の劇的な改善は、彼ら本来の支配的な投球スタイルが戻ってきたことを強く予感させるものです。
いま、彼らのマウンドには「不屈の精神」が宿っています。故障という暗いトンネルを抜け、一マイルでも速く、一寸でも鋭い一球を投じるために、いったいどれほどの汗を流してきたのでしょうか――。
2026年。シカゴとニューヨークで展開される彼らの快進撃は、海を越えて私たちに「進化し続ける勇気」をきっと届けてくれるはずです。
