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元MLBプレーヤーが毎年、現若手スター選手超え報酬を受け取るワケ

MLB

こんにちは!

ちょっかんライフです。

日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページへようこそ。

現地時間7月1日、今年もメジャーリーグ(MLB)の夏の風物詩、「ボビー・ボニーヤの日(Bobby Bonilla Day)」がやってきました。

これは、とっくの昔に引退した元メジャーリーガーのボビー・ボニーヤ氏に対し、ニューヨーク・メッツが毎年「119万ドル(約1億9,000万円)」という巨額の報酬を支払い続ける、もはや球団の恒例行事となっている日のこと。なんと彼は、引退後であるにもかかわらず、現在活躍している一部の若手スター選手よりも高い年俸を手にしているのです。

米スポーツメディア『ESPN』もさっそくこの日にスポットを当てた特集を組んでいます。

――なぜメッツは払い続けるのか?裏にあった「投資話」
この異例すぎる契約の背景には、2000年の契約解除の際、当時のメッツオーナーが持ちかけた「年利8%の利息付きで後払いにする」という驚きの提案がありました。

当時、球団オーナーはある大物投資家のもとで資金を運用しており、10%を超える高配当を確信していたため、「今すぐ590万ドルを払うより、元手を運用して後から利息付きで払った方が得だ」と踏んだのです。しかし、その投資話の正体は史上最大の巨額詐欺事件(マドフ事件)であり、球団の目論見は完全に崩壊。結果として、2011年から2035年まで毎年ボニーヤ氏は多額の小切手を受け取る、ファンにとっても定着化した「記念日」が誕生することになりました。

――大谷翔平の「後払い」との違いは?
かつては「メッツの黒歴史」とからかわれたこの契約ですが、現在のMLBでは少し風向きが変わってきています。

記事内では、ドジャースの大谷翔平選手をはじめとする現代のスターたちの事例を引き合いに出し、球団のぜいたく税(競争均衡ペナルティ)の負担軽減や、補強資金を確保するための「戦略的後払い(ディファード・マネー)」が球界のトレンドになっている実態を解説しています。これらのケースとの決定的な違い、そして現代の球団経営におけるメリットとは何なのでしょうか?

今回は、ESPNのレポートから、ボニーヤ氏をめぐる契約の衝撃の裏側と、2026年現在の現役若手スター選手との具体的な「格差」について、分かりやすく紐解いていきます。

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引退後も続く1億円超の収入と、大谷翔平に繋がる仕組みの秘密

メッツからの支払いは、2011年から始まり2035年まで実に25年間にわたって、毎年7月1日に必ずボニーヤ氏の手元に渡ることが約束されています。

彼が最後にそのメッツのユニフォームを着てプレーしたのは1999年のこと。四半世紀以上前の仕事に対して、今なお毎年1億円を超える大金が支払われ続ける状況は、スポーツ界広しといえども異例中の異例です。

▼ 現役選手との「逆転現象」
この契約が毎年アメリカで大騒ぎされる最大の理由は、フィールドで日々汗を流している現役の若手スター選手たちとの「収入格差」にあります。

  • ボビー・ボニーヤ氏(63歳・元選手): 毎年約119万ドル(約1億9,000万円)
  • 現役の若手有力選手たち:メジャーリーグの最低保証年俸は現在約70万ドル〜(約1億1,000万円〜)

毎日試合に出てチームの勝利に貢献している現役バリバリの若手よりも、とっくに引退して還暦を迎えた元選手の方がはるかに高額の給料を受け取っている――。この強烈な逆転現象こそが、ファンに「ボビー・ボニーヤ・デー」を特別な日として意識させる大きな要因となっています。

では、なぜこのようなおとぎ話のような契約が実現したのでしょうか。そこには当時の球団経営者が描いた「甘い投資ドリーム」と、あるお手本となる事例がありました。

💵 2000年の決断と「お手本」になった前例

時計の針を2000年に戻してみましょう。当時、メッツは成績の低迷したボニーヤ氏との契約を打ち切る(解雇する)決断を下しました。その際、球団にはまだ590万ドル(約9億円)の年俸支払いが残っていました。

すぐに大金を支払いたくなかったメッツは、ボニーヤ氏サイドに次の提案を持ちかけます。

「支払いを10年間先送り(2011年スタート)にして、そこから25年かけて分割で払わせてほしい。その代わり、年利8%の利息を上乗せするよ」

実はメッツには、同じく元所属投手のブレット・セイバーハーゲン氏と結んだ「年間25万ドルを25年間後払いする」という成功例(前例)があったため、今回も同じ手法で乗り切れると確信していました。

💵 バーニー・マドフ氏という「史上最大の誤算」

そもそも、なぜメッツは「8%」という高い利息を払ってまで後払いを選んだのでしょうか? ここに、ビジネスの歴史に残る大誤算が隠されています。

当時の球団オーナー陣は、バーニー・マドフ氏という天才投資家に球団資金を預けていました。当時は「毎年2桁以上の高いリターンを確実に叩き出す、最も信頼できる投資先」と誰もが信じて疑わなかった人物です。

メッツの計算はこうでした。

【当時のメッツの支払い構想
今ボニーヤに590万ドルを払うのはもったいない!
その金をマドフ氏に預けて「年利10%以上」で運用してもらおう。
10年後には大金に膨らんでいるから、ボニーヤに8%の利息を払ってもお釣りがくるはずだ!

しかし、この投資話の正体は、のちに世界を震撼させる大スキャンダルへと発展し、崩壊した『史上最大の巨額詐欺(ポンジ・スキーム)』でした。球団の目算は完全に外れ、運用資金は文字通り全て水泡に帰したのです。

どんなに慌てたところで、時すでに遅し。ボニーヤ氏と結んだ「8%の利息付き後払い契約」という公的な約束だけは、しっかり有効なまま残ることになりました。

この物語は、複利の恐ろしさと、目先の利益を優先し楽観的な経営判断がもたらす影響を示唆する、ビジネスの教科書のような失敗談です。

しかし、現在のメッツの風向きは少し変わってきています。

現球団オーナーである大富豪スティーブ・コーエン氏は、この過去の「黒歴史」を全く悲観していません。むしろ、「毎年7月1日は、ボニーヤ氏を本拠地シティ・フィールドに招いて盛大にお祝いするイベントにしてもいいよね」と、SNSなどでポジティブにジョークのネタとして受け入れています。

かつては球団の ”痛すぎる大失策” と揶揄されたエピソードが、今やファンやメディアが一体となって楽しむ、メッツの個性を彩るポジティブな「お祝い」の日となっているのですから――何とも皮肉なものです。

期せずして、ボニーヤ氏が残したこの「後払い」という形は、現代のスーパースターたちの契約戦略にも受け継がれています。現在のMLBにおいて「後払い(Deferred money)」は、単なる借金ではなく、球団運営を円滑にするための洗練された戦略的ツールなのです。

その最たる例が、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手でしょう。

大谷は総額7億ドル(約1,050億円)という歴史的な超巨額契約を結びましたが、なんとそのうち97%にあたる6億8,000万ドル(約1,020億円)を後払いにしています。

ここで注目したいのが、現在の「現役としての年俸」です。
大谷選手は10年間の契約期間中、ドジャースから年俸としてわずか200万ドル(約3億円)しか受け取りません。

世界最高のプレーヤーである大谷選手の現在の給料(約3億円)は、とっくに引退したボニーヤ氏が毎年もらう給料(約1億9,000万円)と、わずか1億円強しか変わらないのです。

💰 なぜこれほどの多額を後払いにするのか?

その鍵は「贅沢税(CBT:競争均衡税)」の回避にあります。
これは、チームの選手年俸総額が一定の基準を超えた際に、リーグへ支払わなければならない高額なペナルティ(税金)のこと。

支払いを未来へ先送り(後払い)にすることで、契約の「現在の価値」を低く見積もることが可能になります。大谷選手の契約の場合、贅沢税の計算対象となる額を年間4,600万ドル(約69億円)にまで大幅に圧縮することに成功しました。

チームはこれにより、浮いた資金で他の優秀な選手を獲得する「補強の余裕」を生み出せるわけです。なお、大谷選手への実際の巨額支払いは2034年から始まり、年間6,800万ドル(約102億円)が2043年まで支払われる予定です。

▼ 酷似しているようで、中身は真逆

  • ボニーヤ氏のケース:
    成績不振による解雇にともなう「買い取り」という、球団側の失策を埋める後ろ向きな後払い
  • 大谷選手のケース:
    チームが勝つための補強資金を確保するため、選手自らが提案した戦略的で前向きな後払い

同じ後払いでも、その意図するところには180度異なる決定的な差があるということです。

ESPNの調査によると、ボニーヤ氏や大谷選手以外にも、過去の所属チームから今なお巨額の「給料」を受け取り続けているレジェンドたちが存在していました。

  • ボビー・ボニーヤ(再登場!):
    実はメッツ、オリオールズとの「2つ目の後払い契約」もあり、2004年から毎年50万ドル(約7,500万円)を別途受け取っています。
  • ブレット・セイバーハーゲン(ボニーヤ契約の元ネタ!):
    メッツから毎年25万ドル(約3,750万円)を25年間受給中。
  • マックス・シャーザー:
    ナショナルズ時代の契約に基づき、総額1億500万ドル(約157億5,000万円)が2028年まで分割支給。
  • マニー・ラミレス:
    レッドソックス時代の後払い分、総額2,420万ドル(約36億3,000万円)が今年2026年まで支払われます。
  • クリス・デービス:
    かつて上原浩治投手とのトレードでオリオールズに加入し、本塁打王に2度輝いた大砲。彼は2016年に7年総額1億6,100万ドルという超大型契約を結びますが、その後は大不振に陥り、米メディアから「MLB史上最悪の大型契約(不良債権)」と酷評されることになりました。しかし、契約に組み込まれていた総額5,900万ドル(約88億5,000万円)の後払い条項により、彼は2026年からは350万ドル(約5億2,500万円)、2033年からは140万ドルへと段階的に形を変えて2037年(51歳になる年)まで毎年報酬を受け取り続けます。ファンを絶望させた選手が、皮肉にも「第2のボニーヤ」として生涯安泰の富を手に入れているという事実は、アメリカのスポーツビジネスの恐ろしさと、同時に言い知れぬ妙味を感じさせます。

最後に、今まさにフィールドで躍動している2026年現在の現役プレーヤーたちの年俸と、ボニーヤ氏が受け取る約119万ドルを比較していきましょう。

MLBの給与体系では、デビュー間もない若手選手は能力に関わらず年俸が低く抑えられるため、信じられないような現象が起きています。

ちなみにメジャーにおいて、選手の価値を測る指標「WAR(勝利貢献度)」が4.0以上といえば、文句なしのオールスター級(一流選手)と見なされる数字。

それも踏まえご覧いただきたいのですが、今シーズンに凄まじい成績を収めながらも、ボニーヤ氏より低年俸の若手スター選手リストがこちらです(主要個人タイトルを狙える選手ばかり!)。

選手名2026年俸(日本円換算)WAR(勝利貢献度)
ピート・クロウ=アームストロング894,000ドル(約1億3,410万円)4.9(超・オールスター級)
ジェイコブ・ミジオロウスキー788,300ドル(約1億1,825万円)4.3
ディロン・ディングラー834,900ドル(約1億2,524万円)3.7
キャム・シュリトラー801,425ドル(約1億2,021万円)3.7
オット・ロペス810,500ドル(約1億2,157万円)3.6
ケビン・マクゴニグル780,000ドル(約1億1,700万円)3.4
J.J.ウェザーホルト780,000ドル(約1億1,700万円)3.4
ニック・カーツ780,000ドル(約1億1,700万円)3.3
ミゲル・バルガス805,700ドル(約1億2,085万円)3.2
※1ドル=150円で換算。データはESPN Researchによる現地6月30日(火)時点のもの

リーグを代表するような活躍を見せる若き天才たちが、少ないサラリーでチームを牽引している――。この構図は、MLBがいかに「若いうちは格安で奉仕し、実績を積んでフリーエージェント(FA)になってから莫大な富を得る」という、冷徹な実力主義と独特のサラリー構造を持っているかを如実に物語っています。

CHECK!:なぜ彼らはこんなに安いの?

メジャーリーグでは、デビューから3シーズンを終える(または特定の条件を満たす)までは、球団が提示した「メジャー最低保証年俸(約70万ドル〜)」に近い固定額で契約をコントロールされてしまう仕組み(年俸調停前)があります。

そのため、いくらチームの主軸として「オールスター級」の活躍を見せていても、最初の数年はボニーヤ氏の「119万ドル」にすら届かない、格安お給料でチームに身をささげる(=球団にとっては最高のコスパ選手)という歪みが生じてしまいます。

だからこそ、今年もアメリカのファンは7月1日にタイムラインを眺め、皮肉とリスペクトを込めて口々に呟いたのです。

「ハッピー・ボビー・ボニーヤ・デー!」

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