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MLB佐々木朗希161キロリリーフ投手爆誕の背景とコーチングスタッフの献身

MLB

こんにちは!

ちょっかんライフです。

日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。

Embed from Getty Images 2025年
ディビジョンシリーズ第1戦、フィリーズ戦の9回に投球。

ドジャースの投手ディレクターをつとめるロブ・ヒル氏が、ESPNのジェフ・パッサン記者とのインタビューで、

佐々木朗希がいかにして逆境を乗り越え、新たな役割で輝きを取り戻したか

について語りました。

するとそこには、

✓問題点を的確に把握し
✓選手を指導し
✓明確なコミュニケーションラインを築き
✓選手たちを常に同じ方向へ導き
✓成長させ
✓その変化を定着させる能力

といった、米野球界の中でも屈指の手腕を誇る組織力がありました。

詳しく見ていきましょう。

※文中の数値データや試合出場回数等はすべて日本時間10月9日時点のものです。

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161キロリリーフ投手爆誕

「自分が好きな投手の体の動きやプレーを観察しては、頭の中に記録している」というヒル氏。

すでに2021年当時から、NPB(日本プロ野球)を席巻した10代の天才、佐々木朗希の最新登板動画を欠かさず視聴していたといいます。

そしてMLBでの2025年ルーキーシーズン、

ドジャースに移籍した佐々木投手は思いもよらぬ苦戦を強いられました。

8試合の先発登板
5月に右肩のインピンジメントで故障者リスト(IL)入り
2週間後に投球再開したものの、6月中旬に再び休養へ

その2ヶ月後、トリプルAのマウンドに復帰しましたが、速球はわずか93マイル(約147キロ)にとどまります。

9月初旬に行われた面談の席で球団首脳陣からは、

たとえ今、メジャーの先発ローテを外れ、マイナーで平凡な成績しか残せていないとしても、信頼は揺るがず必要とされるあらゆる手段を講じる用意がある

ことが彼に伝えられました。

これに対し、佐々木は投球フォームの抜本的改善に前向きであると意思表明。

そこから些細だけれど極めて重要な修正がかけられた結果、

翌週に起こったことといえばポストシーズンの流れを一気に変えるセンセーショナルな展開。

レギュラーシーズン終盤2度の救援登板に成功
●レッズとのワイルドカード・シリーズ決勝戦
●フィリーズとのナ・リーグ・ディビジョンシリーズ9回に登板

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フィリーズ戦のナショナルリーグ・シリーズ(NLDS)後。

速球は時速100マイルを超え、スプリットは猛烈に回転し、圧倒的なクローザーの役目をまっとう。

休養中に鍛えたフィジカルの躍動、そしてマウンドでの圧倒的な存在感…。

ロウキの復活はドジャースに勝利をもたらすとともに、新たな希望の光にもなったのです。

球団フロントはじめヒル氏らコーチングスタッフは、この勝利が今後も続くと確信。

ただ1ヶ月足らずですべてがうまくいったのは確かに幸運でしたが、決して偶然などではありませんでした。

ドジャースは投手からより多くのものを引き出したい時、

その選手を、ヒル氏ともう一人、投手パフォーマンスコーディネーターのイアン・ウォルシュ氏のもとへと送り込みます。

彼らは、佐々木のマイナーでのトレーニングに付き添った感想を、

「彼の才能と将来性は素晴らしい。過去がベストな状態ではなかったとしても、我々が築いてきたシステムで原因を突き止め、必ず支援につなげられると疑わなかった」

としたうえで、

「ここ数年、彼がどれほど苦しんできたか誰が知っていただろう。下半身のこと、体重移動の仕方、彼の望みと先入観に縛られていたこととのズレとか、身体面と精神的アプローチがごちゃまぜになってたんだ」

と振り返りました。

そもそも23歳でのメジャーリーグ転向は異例のこと。

朗希投手といえば、

・2022年に完全試合を達成
・次の登板でも8イニングを無失点に抑える
・その後2シーズンは腕と腹斜筋のケガでマウンドに立つ機会が限定
・合計200イニングを投げるのがやっとの状態に

それでも本人はアメリカに渡る前、

日本で実績を積み重ねてからの挑戦ではなく、

また、25歳を過ぎ国際FAとして数億ドルの報酬を得る道でもなく、

自分が信じる運命を突き進む決意を固めていました。

一方のドジャースは、彼が日本での最終シーズンに本来の力を発揮できていないことを認識。

実際チームとの交渉の場では、佐々木自身も過去2シーズンで球速がガタ落ちしてしまったことに触れて一つの大きな課題を投げかけます。

「僕の投球速度をどうしたら改善できますか?」

ここであえて、チームメイトの日本人選手が海を渡ったばかりの頃を思い返してみると、

大谷翔平はエンゼルスの春季キャンプ初戦では、史上最も才能ある選手とは見なされなかった
・今シーズンのドジャースのエース山本由伸は、昨季デビュー戦前半は不安定なプレーが続いた

mic
mic

こういうことって、なぜか記憶から抜け落ちちゃうんだよね…

また、朗希選手と大の仲良し、ドジャースのリリーフ投手ブレイク・トライネンからも一言。

「それに、ロウキは彼らが来た時よりも若い。それが理由の1つなのかは分からないけど、渡米して若いうちから世界の重荷を背負ってしまった。こういう状況から抜け出すのは簡単じゃない、時に人をダメにしてしまうこともあるんだから」

メジャーリーグレベルの投手は皆、「優れた代償能力者」だというロブ・ヒル氏。

身体に何か問題が生じると、それを補うために体を動かす別の方法を見つけることができる。

ただし問題なのは、そうすることで他の部分に歪みが生まれ不安定さが増す。

そして最終的には、そのストレスの重みで体が壊れてしまう。

ロバーツ監督が見立てたように「良くも悪くも、正しいか間違っていたかは別として、彼はあまり指導を受けていない。才能があるからこそ、ずっと自分のプログラムで頑張ってきたんだ」

そう評される佐々木朗希と向き合ったドジャースのコーチングスタッフ。

「私は枠にはめ込んだり、特定の動きをしなければならないといった指示はしない。ただ、あなた自身が納得できる様々なことを質問し、それを実現させる方法を見つけ、見守るだけ」

ヒル氏はこうしてウォルシュ氏と共に、佐々木から得た回答をベースに投球メカニクス(身体の動き、フォーム、テクニック全般)を分析し、問題解決のための一連のリストを提示。

彼らは、朗希投手の問題は、

❶骨盤の前傾が原因で、回転が早すぎること
❷投球動作で、肉眼では気づかないわずかな乱れが大きな混乱を引き起こしていること

を突き止めます。

加えて、後ろ足の位置修正が彼の不調の改善につながると推測。

そして、佐々木が提供した自己ベストだった時の2022年-23年シーズンのビデオを確認するなかで確信。

骨盤を早期に回転させるとすべてが台無しになる

彼らは3時間もの間、新しいポジショニング効果 ”後ろ足を曲げること” について話し合い、

フォームを改善
✓前足を大げさに蹴り上げて体勢を立て
✓その足を真下に広げ
✓深く沈み込み
✓回転を遅らせる
✓上、下、外。上、下、外。

もし投球感覚が狂っても、すぐに朗希選手はこう自分に言い聞かせる「上、下、外。」

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現地9月24日、Dバックス戦の7回に登板し新フォームを披露。

新しい投球フォームは見た目は似ているものの、その遅さによって球が安定し、グンと伸びる。

これにより、それまで柔らかすぎて速球の球速を損なっていたエネルギー伝達がスムーズになるという理論です。

休暇中にウェイトルームで下半身の筋力を強化した佐々木は、このバックレッグ投法をできるだけ早く試したいと熱望。

10月に少しでも貢献できるチャンスを得るためには、残された時間はもうほとんどありません。

できると思う」と朗希

こうして9月6日、球場のマウンドに立ち彼が投げた球は時速95~97マイル(約154~156キロ)。

ヒルウォルシュからは思わず驚きの声を上がりました。

というのも、朗希投手はスプリングトレーニング中、

ブルペンでの投球は試合で投げる球速よりも通常4~5マイル(約6~8キロ)遅い

と話していたから。

ブルペン練習から3日後、次のトリプルAに登板し調子が戻った速球平均は時速98.3マイル(約158.2キロ)、最高は時速100.6マイル(約162キロ)。

スプリットは恐るべき速さで、しかも春季トレーニングでヒル氏が伝授したカッターさえ投げて見せ、ドジャーススタッフ陣は皆、歓喜に沸き立ったのでした。

ドジャースの若き指導者とは?

リリ
リリ

ここで、ロブ・ヒル氏の若いキャリアの軌跡をご紹介!!

ウェストモント大学出身の元投手ロブ・ヒル(2018年卒)は24歳でロサンゼルス・ドジャースの投手コーディネーターに就任。

メジャーリーグ史上最年少のコーチの一人となります。

大学では、コミュニケーション学を専攻、ケガに悩まされがちだったこの右腕投手は野球部のブルペンではわずか24試合しか登板できませんでした。

しかしながら野球部のヘッドコーチ、ロバート・ルイス氏は証言します。

「彼は選手時代も人を成長させるコーチのような存在で、常に投球フォームやトレーニング方法を見分ける眼識を持っていたね。彼がこのスポーツ界で将来を担うことは常に明白だったよ」

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2017年大学時代

データや最新技術、科学をプログラムに取り入れた野球トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」での仕事に就いた若きロブ・ヒル

2019年までにその図抜けた専門知識が評判を呼び、MLB投手や幹部間で有名な存在となります。

ロブはドライブラインの同期高速カメラシステムを使用して、オフシーズンにラボを訪れたドジャースのエース、クレイトン・カーショウの練習メニューを立案・構成。

そのような経緯もあって、ドジャースは2019年暮れにロブ青年を雇用。

このとき球団は彼に異例の便宜を図り、ドライブラインでの併勤務を許可していたそうです。

その後2022年1月、ジ・アスレチックは記事を通じて、ドジャースがロブ・ヒル(当時26~7歳)をマイナーリーグ投手ディレクターに昇進させる予定と報じました。

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Rob Hill

今期はリリーフ投手として再デビュー

2025年シーズン、ドジャースのブルペンは苦戦にあえいでいました。

冬に7200万ドルで契約したクローザー、タナー・スコットは不調
注目度高くFA契約したカービー・イェーツもハムストリングの負傷でIL入り

先発投手陣の層の厚さに比して、今年のブルペンはなんとも脆弱な状況に陥ります。

そこでドジャースは佐々木投手に白羽の矢を立て、ブルペンへの選択肢を打診。

9月18日初リリーフ登板すると2奪三振を記録、その3日後またもや無失点イニングを披露。

9月24日と26日にも登板し、4奪三振、無四球でドジャースのポストシーズンロースター入りを確固たるものにします。

フィリーズ戦では最高時速101マイル(約163キロ)の豪速球を投げプロ初セーブを挙げた佐々木朗希

彼は、陰の立役者であるヒル、ウォルシュはもとより、球団フロント、そしてドジャースの投手コーチ、マーク・プライアーとコナー・マクギネスに感謝の意をささげています。

シビアな場面に耐えうる肉体づくりに寄り添ったストレングスコーチのトラビス・スミスにも。

佐々木は来年また先発に戻るとしても、今月はリリーフ投手として出場しており、ドジャースが10月を再び制覇する計画の重要な一翼を担っています。

そして今まさに彼は、信頼と才能があれば失ったものを取り戻すことができるという事実を改めて世に示してくれました。

ヒル氏は語ります。

「どんなに状況が悪そうに見えても、決して誰かを諦めたり、切り捨ててはいけない。“Never, ever write somebody off, never give up on somebody, regardless of how bad the circumstances look,”

「だって本当に分からないんだから。“Because you truly never know.”

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