こんにちは!
ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。
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メジャーリーグベースボール(MLB)の各球団にはそれぞれ、プレーオフ進出のカギを握るリーグ屈指のスーパースターがひしめき合い、誰もが彼らの活躍を信じて疑いません。
ただこれまでポストシーズン進出を果たすチームの中には、スター選手の陰に隠れていた新たな才能が躍り出て、勝負の行方を左右する働きを見せることがあります。
そこで当記事では、優勝争いに加わるチームのうち、つい見過ごしがちけれど予想外に高いレベルのパフォーマンスを発揮している気になる新星をピックアップ。
MLBファンにとって熱狂と興奮の季節「10月」ーーそこに向けて必ずや輝きを放つであろう彼らに期待を込め、その魅力に迫ってまいりますーー。
どうぞ最後までお付き合いください。
MLB2025 陰のハイパフォーマンス・プレーヤー
ジャック・ドレイヤー/ドジャース
出身:アメリカ合衆国 ユタ州
生年月日:1999年2月27日(26歳)
身長:約188cm
ポジション:投手
jackdreyer86
2022年
ジャック・ドレイヤーはアイオワ大学で20試合に出場し、うち10試合に先発出場。そこで同大にとっては2008年以来初の7イニング完投、そして2016年以来の完封勝利をあげています。
大学を卒業したあとは、2021年ドラフトではどこからも指名がなく、ドラフト終了後の8月になってようやくロサンゼルス・ドジャースに見いだされプロ入り。
マイナーリーグ100試合に出場し、防御率2.18、WHIP1.11の成績を残し、9イニングあたり平均11.9奪三振を記録。
WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
投手の能力を示す指標で、1イニングあたりに許した走者数(被安打と与四球の合計)を計算する。
計算式:
(被安打 + 与四球))÷ 投球回
見方:
・値が低いほど安定した投球をしていると評価
・一般的に、1.00未満であれば非常に優秀、1.20未満であればエース級、1.40を超えると不安定
ドジャース組織内で着実にステップアップを重ね、2025年シーズンの東京シリーズでメジャーデビューを果たし、チームのトップリリーフ投手の一人へと成長を遂げました。
今年の4月、米LA地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』のダグ・パディラ記者はロバーツ監督の談話として、シーズン開幕からのドレイヤーの活躍と彼がすぐにドジャースのクラブハウスに溶け込んだことには目を見張るものがあったと伝えています。
「ドレイヤーはとても好感が持てる選手で、みんな彼を気に入っている。本当に頭がよく、私が今まで見てきた若手の中でも最も賢い選手の一人。好奇心は十分あるけど、過剰すぎない。影響を受けやすくもなく、学ぶ意欲もある。で、明らかに才能が素晴らしい。彼は本当に嬉しい嬉しい驚きだったよ。」
この頭脳派リリーフ左腕は、フォーシームの平均球速は約148.86 km/hながら、速球と約128.75 km/h台後半のスライダーを巧みに組み合わせることで最適な効果を生み出しています。
対戦相手のバッターはドレイヤーに対して、平均OPS.590に抑えられており、バレル率3.3%はMLB全体で97パーセンタイルにランクイン、期待防御率2.30はメジャーリーグ(200打席以上)でトップ3に入るすばらしい数値。
投手のバレル率
投手の被弾傾向を評価する際に用いる。
バレルゾーンとは:
打球速度と打球角度の組み合わせで長打になりやすい範囲(ゾーン)を指す
バレル率の算出:
打球のうちバレルゾーンに入った割合を算定。例えばバレル率10%なら打球100本中10本がバレルゾーンに入ったことを意味する
投手のバレル率見方:
・MLB投手のバレル率は、一般的に平均して5%から7%程度とされる
・高いバレル率は、投手にとって打たせて取る能力が低い傾向にあり、打者に強い打球を打たれる割合が高いことを示す
・低いバレル率は、投手にとって打たせて取る能力が高い傾向にありあり、打者に強い打球を打たれる割合が低いことを示す
パーセンタイルとは?
データを小さい順に並べたときに、ある値が全体の何%の位置にあるかを表す数値。パーセントは全体を100%としたときの割合、パーセンタイルはデータを小さい順に並べたときの順位を%で表すもの。
選手の成績パーセンタイル見方:
・50パーセンタイルは中央値で、選手の成績がちょうど真ん中
・90パーセンタイルは、上位10%に入る優秀な成績
・10パーセンタイルは、下位10%に入る成績
例)
ある投手の防御率が3.00で、それが90パーセンタイルだった場合、その投手の防御率は他投手の90%よりも優れており非常に良い防御率であるということ。反対に、同じ3.00の防御率でも50パーセンタイルならば平均的な防御率であることを意味する
期待防御率
期待防御率(FIP)とは、投手が1試合9イニングで失点するであろう平均的な回数を表す指標。奪三振・与四球・被本塁打といった投手の責任とされるものから投手個人の能力を測るために用いる。
FIP計算式:
((13×被本塁打 + 3×(与四球 + 与死球 – 敬遠) – 2×奪三振))÷ 投球回数) + *補正値
*補正値(リーグや球場によって異なる打球の性質や運による影響を調整するための値)
リーグ全体の(失点率-(13x被本塁打+3x(与四球-故意四球+与死球)-2x奪三振)÷投球回数)
例)
ある投手のFIPが3.50なら、その投手が9イニングを投げた場合に3.5点程度の失点をするだろうと予測できる。もし実際の防御率が4.00だったらFIPとの差は、野手の守備や運によって失点が増えた可能性があると判断できる
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5月、ダイヤモンドバックス戦でリリーフ登板しイニングの最終アウトを奪う。
ジャック・ドレイヤーはまた、ルービックキューブを最速13秒で解くことができる達人としてもよく知られた存在です。
今春初めには、名門スタンフォード大で「数理と計算科学」を専攻した理系の秀才トミー・エドマンとのルービックキューブ直接対決で勝利。
さらにドレイヤーは、この立体パズルを解く天才的な才能だけにとどまらず、クラブハウスで始まったボール3つを使ったジャグリング対決では、床に落ちて跳ねたボールを左足で19回もリフティングする器用さも見せつけました。
ルービックキューブで培った集中力と没頭性、メジャー屈指の回転数を誇る速球を武器に、ポストシーズンでも大いなる活躍が期待されます。
アイザック・コリンズ/ブルワーズ
出身:アメリカ合衆国 ミネソタ州
生年月日:1997年7月22日(28歳)
身長:約173cm
ポジション:外野手(左翼手)
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6月から一気に打撃力が向上。
今シーズン、通称「普通の選手ぞろい」とされるブルワーズの快進撃が止まりません。
現時点で70勝を達成した初のチームというだけでなく、連勝を9にまで伸ばし、チームはファンの心をガッチリとつかんでいるようです。
いまやチームの要となったアイザック・コリンズは、ロッキーズ傘下時代にルール5ドラフト(有望な若手がマイナーリーグで埋もれてしまうのを防ぐため他球団が指名できる制度)でブルワーズへ。2024年9月にメジャー昇格を果たした新人選手。
そして無名の才能が次々と開花するミルウォーキーで、本日8月10日(日本時間8月11日)球団本拠地アメリカンファミリーフィールドで行われたゲームーー。
ブルワーズは最大5点のビハインドをひっくり返し、メッツに逆転サヨナラ勝利。同点に追いついた最終回でサヨナラ本塁打を放ったのがコリンズでした。
この日は前夜から記録的な大雨と突発的な洪水にさらされ、球場への主要アクセス道路のうち2本が冠水、駐車場では13000台以上の駐車スペースのうち約半分が水浸しとなる事態に。
そんな中、選手たちは水害を避けた通勤ルートを共有メッセージでやり取りしながら、なんとかスタジアムに到着。しかも厳しい環境に見舞われながら、33700人ものファンがホームに足を運んでくれたのです。
スター選手を抱える資産家球団と渡り合う不屈のチームスピリットは試合でも発揮され、直近9連勝では6試合が、スイープ(3連勝)したメッツとの3連戦すべてが逆転勝利という胸アツ展開。
キャリア初のサヨナラアーチを決めたコリンズは「正直、ファンが来てくれるかどうか分からなかったけど、本当に来てくれた。このチームとこの街のためにプレーできることが本当にうれしい。」と感謝のコメントを残しました。
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7月はナ・リーグ月間最優秀新人賞に輝く活躍。
スピードもパワーも平均的とされる身長173cmの小柄な左翼手は、6月を契機に右肩上がりで打率が上昇、7月の月間打率.321、25安打、11打点をマーク。
6月1日以降のwRC+は170で、 180打席以上をこなした選手の中で4位にランクイン。 7月にはナショナルリーグ月間最優秀新人賞に輝いた上、守備でも堅実なプレーで貢献。
またフライボールへのキャッチ能力も傑出しており、レフトで平均以上のアウトを8回記録しているのは、同ポジションにつく選手の中で最多記録となっています。
wRC+(weighted Runs Created Plus)とは?
打席あたりの得点創出能力を数値化した相対評価指標のこと。
パークファクター考慮:
球場ごとの得点の入りやすさ(パークファクター)を考慮に入れるため得点環境に左右されにくい
平均との比較:
100で平均的、150なら平均より50%+得点を生み出す、80は平均より-20%得点しか生み出せないと評価
他指標との関係:
wRC+は、打撃指標であるwOBA(weighted On-Base Average)を基に算出され、平均的な控え選手と比べどれだけ勝利数を増やしたかを表すWAR(Wins Above Replacement)などの指標にも組み込まれている
例)
・wRC+が120の打者は、平均的な打者よりも20%多くの得点を生み出す能力があると言える
・wRC+が90の打者は、平均的な打者よりも10%少ない得点しか生み出せないと言える
ドミニク・キャンゾーン/マリナーズ
出身:アメリカ合衆国 オハイオ州
生年月日:1997年8月16日(27歳)
身長:約180.3cm
ポジション:外野手(右翼手)
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2月シアトル・マリナーズ Photo Day。
2023年7月31日、同月にダイヤモンドバックスでメジャーに昇格したばかりのドミニク・キャンゾーンはトレードによってマリナーズへ移籍しました。
この年メジャーでは移籍前を含めた2チーム合計で59試合に出場して6本塁打、21打点を記録。
そして今季は昨年に比べ打撃力が向上。打球速度を示す指標 Max EV115.9は、MLB全体で97パーセンタイル(MLBトップ3%)にランクイン。wRC+は前年88からwRC+126へと大幅アップ。
加えて、2024年のOPS.652(OPS+90)から、2025年シーズンはここまでOPS.793(OPS+127)と、自身キャリアハイの勢いでチームの得点に貢献し続けています。
OPS(On-base Plus Slugging)
出塁率と長打率を足し合わせた打撃指標の一つで、数値が高いほど打席あたりでチームの得点に貢献する打者であると評価。
OPS計算式:
出塁率 + 長打率
出塁率計算式:
(安打数 + 四球数 + 死球数) ÷ (打数 + 四球数 + 死球数 + 犠飛数)
長打率計算式:
塁打数 ÷ 打数
塁打数計算:
塁打数 = (単打 × 1)+ (二塁打 × 2)+ (三塁打 × 3)+ (本塁打 × 4)
例)
打者Aの成績
安打数100、二塁打 20、三塁打5、本塁打30、四球50、死球5、犠飛5、 打数400
計算すると、
出塁率 = (100 + 50 + 5) ÷ (400 + 50 + 5 + 5) = 155 ÷ 460 = 0.337
塁打数 = (100 ×1) + (20 ×2) + (5 ×3) + (30 ×4) = 100 + 40 + 15 + 120 = 275
長打率 = 275 ÷ 400 = 0.688
OPS = 0.337 + 0.688 = 1.025
打者AのOPSは1.025
OPS+
OPSをさらに発展させた指標で、パークファクター(球場特性による影響)やリーグ平均を考慮してより正確に打撃力を比較できるよう調整。
計算:
OPSをパークファクターで調整
リーグ平均100として、その打者がどれだけ上回っているかを数値化
評価:
・100はリーグ平均レベル
・120はリーグ平均より20%優秀
・80ならリーグ平均より20%劣る
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延長11回に先制点を挙げ、勝利を決定づけるタイムリーヒット。
連勝で迎えた8月7日(日本時間8月8日)、シアトルの本拠地Tモバイルパークで行われた試合では延長11回までもつれた熱戦の末、キャンゾーンにタイムリーが飛び出し劇的なサヨナラ勝ち。3連戦を見事にスイープしています。
こうして翌々日に控えたマリナーズのレジェンド、イチロー氏の永久欠番セレモニーの前祝いで打線を活気づけると、本日8月10日(日本時間11日)には8回裏にタイムリーヒットを打ちチームは7連勝。
現在ア・リーグ同地区の首位アストロズに、わずか0.5ゲーム差で怒涛の追い上げを見せているマリナーズ。
打率.280としたドミニク・キャンゾーンは、今まさにプレーオフ進出をかけて終盤戦を走り抜けようとしています。
10月ーーそれはレギュラーシーズンが終了し、次元の異なる緊張感とドラマを生む ”ポストシーズン” が始まる月ーー。
このワールドシリーズ制覇に向け戦う重要な時期も、引き続き彼らの活躍に期待したいですね。