こんにちは!
ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。
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NLCS第2戦
MLB2025年のナ・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(NLCS)第1戦が始まる直前、
ESPNのジェフ・パッサン記者は10月13日(日本時間14日)の記事で、
同シリーズ勝者次第で、メジャーリーグベースボール(MLB)2027年シーズン開催の是非が問われる可能性について言及。
この、リーグ優勝決定シリーズの結果は、MLBと選手会の間で今後勃発するであろう労働争議の象徴となるだろうと論じています。
これはいったいどういうことなのでしょう。
そのような見解が生まれる背景とともに詳しく見ていきます。
MLBシリーズ勝者と労働争議
シリーズ勝者がもたらす影響と背景
現状、野球界全体を見れば大多数のオーナーがサラリーキャップ導入を望んでいるのは確か。
そこに、5億ドルを超える記録的な年俸総額を誇るドジャースが、ワールドシリーズ連覇を果たすとなれば、
リーグによる年俸規制の動きはますます強まることが予想されます。
一方で、年俸総額が常に下位3分の1にとどまるブルワーズが勝利すれば、
たとえスモールマーケットであっても勝利を収められることを実証できると同時に、
他の低収入チームの失敗は単に支出面だけではなく、戦略的な組織力の問題であったことも証明されるでしょう。

MLBのサラリーキャップ問題って何?
MLBのサラリーキャップ問題
MLBには厳格なサラリーキャップ(年俸総額の上限を設ける制度)はなく、代わりにチーム間の不均衡(選手年俸や戦力)解消のため「贅沢税」が導入されています。ですが依然として高額年俸を支払うチームが存在し、その結果、一部の富裕球団に有利になる状況が続いています。
贅沢税:平均年俸が一定の上限を超えたチームに、ペナルティとして多額の税金を課す仕組み
課税:上限額を超えた額に応じ税率が段階的に増加し、連続で超えた場合は更に税率UP
問題点:高額年俸を支払う裕福球団が戦力補強を続けチーム間格差を拡げているという批判がある
Embed from Getty Images 2022年
前回、MLBオーナー会議後の記者会見の様子。
2026年12月1日(日本時間2日)に期限を迎えるメジャーの次期団体交渉協定。
その正式交渉が来春に始まる際には、どちらが今年のシリーズを制したとしても、各々の立場を裏付けるカードのようにして使われる可能性が大なのです。
MLBではこれまでに何度も(最低保証などの)選手契約や収益分配、サラリーキャップ等をめぐる全面対立でストライキやロックアウトに突入。
労使関係がギクシャクしてきたものの、近年はある程度安定し協調路線を歩んでいるかに見えていましたが、ここにきて状況は緊迫化。
選手会側は一貫してサラリーキャップには断固反対の意向を示しており一歩も引かない構えですが、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは、「必要ならロックアウトも辞さない」と発言。
このようなことから、
・もしドジャース連覇ならサラリーキャップが強硬導入され、2027年シーズン開催が危うくなる
・もしブルワーズが世界王者になれば、「制度改革が必要」という主張は覆され説得力を失う
といった声が聞かれるようになりました。
MLBナ・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(NLCS)
ここで改めてポストシーズンを戦う2チームを比較してみると・・・。
ドジャースとブルワーズ比較
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ドジャースは、
~豊富な資金力に支えられた育成システムと選手補強が特徴~
●2024年までにリーグ優勝25回、地区優勝24回、ワイルドカード3回の成績
●近年では2020年と2024年にワールドシリーズ優勝
●昨季レギュラーシーズン成績は98勝64敗、勝率.605
●今季成績は93勝69敗、勝率.574
●2025年プレーオフはNL西地区1位で第3シード獲得
●レギュラーシーズンのチーム本塁打数244本はブルワーズより78本多い
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ブルワーズは、
~この10年間で低収益ながら成功を収めた先駆者的存在~
●2024年は2年連続6回目の中地区優勝を達成
●今年の成績は97勝65敗でメジャーリーグ最高成績
●レギュラーシーズン、ドジャースとの直接対決は6連勝
●2025年プレーオフではNL中地区1位で堂々の第1シード獲得
●1982年AL(ア・リーグ)所属時代に1度だけLCS優勝経験あり
●ワールドシリーズ(WS)での優勝なし
シリーズ勝敗の先にあるもの
前回2021〜22年のMLB労使交渉は100日間に迫るロックアウトの末、開幕寸前に新たな協定が締結され、ギリギリのところでシーズン全試合が維持されました。
MLBのロックアウト
球団(オーナー側)が選手に対し、球団施設の使用禁止や給料の支払いを停止すること。選手会側がストライキを行うのとは対照的に、球団側が労働力である選手を排除することで、労使交渉を進展させようとするもの。ロックアウト中は選手の契約交渉も停止されます。
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MLBロックアウトはドジャース連覇により行使されるのか?
ドジャースの選手たちはみな真摯に、ひたむきに連覇を目指しているはずです。
けれどもそれを達成した時点で、「制度改革はやはり必要だね」という風潮にゴーサインを出すきっかけとなるかもしれない。
本当ならセレブレーションを浴びるべき偉業のはずが、
✓ 制度の不均衡を改めて浮き彫りにし、
✓ サラリーキャップ問題を再び議論の的にあげ、
✓ シーズンの開催を左右する
つまり想定されるのが、
✓ 下位6球団合計に匹敵する年俸総額に批判的だった他オーナーから更なる非難を浴びる
✓ 年俸上限制度導入を支持してきた下位球団ファンの要求に拍車がかかる
✓ MLB機構はこれらファンの不満解消策としてサラリーキャップ制度を推進する
一人ひとりの選手にしてみれば、とんだ余波に見舞われかねないというわけです、
他方で、
ブルワーズが勝ったからといって労使交渉で選手会側に有利にはたらくわけではないのですが、
選手会がサラリーキャップの必要性をめぐる議論において、
巨大組織ドジャースに比べ年俸総額1/4しかない自称 ”平均的選手チーム” の勝利は、潤沢な資力に関わらずチームビルディングの才で頂点に立てることが裏付けられます。

だからサラリーに上限を設ける必要はないという主張が成り立つね!
気がかりな労使協定の行方
富裕球団の連続優勝 or 小規模球団の戦略勝ち
確かにチャンピオンシップシリーズ(NLCS)は優勝決定シリーズの一つに過ぎませんが、しかし、それ以上の意味をはらんでおり、
今回は、「毛色の異なるどちらのチームが勝つか」とともに、
さらに、その先にある(といってもそうそう時間の猶予はない)労使協定にも少なからぬ影響を与えそうなことがわかりました。
ただ、そんなのっぴきならない現状にあっても、米野球界は経済規模においてほとんど苦戦している様子は見られません。
テレビ視聴率は上昇し、観客動員数は増加傾向にあるのもまた事実。
24年シーズン前に導入されたピッチクロックによって野球は近代化、
来季には自動ボールストライクチャレンジシステム(通称ロボット審判)が採用され、野球の魅力はさらに増すでしょう。
でもまぁそれだけに、シリーズ終了後の労使関連についてはやはり気になりますよね。