こんにちは!
ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。
Embed from Getty Images 2022年
前回のストライキで施錠されたカブスの本拠地、リグレー・フィールドのゲート。
2026年12月1日(日本時間2日)、MLBは現行の労働協約(CBA)の期限切れを迎えます。
現在、協定失効まで残り1年となり、スポーツメディアや野球関係者の発言もにわかに熱を帯びてきました。
そこで本記事では、今後の労使交渉に関する報道にアンテナを張り巡らし、タイムリミットまでの攻防をリアル追跡していきます。
それではさっそく始めましょう!
MLB2026 労使交渉の最前線 主な論点とは
過去の経緯と最新情報とを照らし合わせ、主な問題点と予想される方向性をチェック。
次回の労使交渉は単なるルール変更では終わらず、「お金の分配(収益配分)」と「選手のキャリア」に直結する、激シビアな話し合いの場となりそうです。
前回2022年のテーマとその後の球界を取り巻く動向から、2026年交渉で双方にとって譲れない争点をそれぞれの視点でまとめました。
労使交渉の主要テーマ:選手会 vs オーナー側
交渉の中心となるのは、
- 選手の収入を増やすこと
- 偏りのない戦力均衡を保つこと
という、永遠の対立軸。
| 争点となる主要テーマ | 選手会の視点 | オーナー側 (MLB) の視点 |
|---|---|---|
| 年俸総額の上限導入 | 断固反対 | 導入追求 |
| 現ぜいたく税基準額を大幅に引き上げ、より多くのチームに支出を促す | 競争の公平性のためサラリーキャップを導入し、資金力のある球団の過剰支出を抑制したい | |
| 最低年俸の引き上げ | 大幅な引き上げを要求 | 段階的な引き上げに留めたい |
| 特に、若手選手(サービスタイムの短い選手)の待遇改善は最優先事項。 | 総人件費の上昇を抑えたい。前回(2022年)で大きく上がったため、今回は抑制傾向に。 | |
| 年俸調停権の取得条件 | 早期化を要求 | 現行維持 or 遅延を主張 |
| 調停権やFA権で選手が高年俸を得る機会を増やし、球団の若手選手囲い込み期間を短くしたい | 若手選手を長く保有しチーム編成の安定性と育成への優遇制を確保したい | |
| 国際ドラフトの導入 | 原則反対 | 導入を追求 |
| 中南米選手がFA市場を通さず一律の契約金とドラフトで縛られるのは反対、選手の選択の自由重視 | 国際的選手の獲得方法の統一と競争の公平化を推進し、不透明契約の慣例を廃止 | |
| ポストシーズン進出チーム数 | 増やすことに賛成 | 増やすことに賛成 |
| リーグ全体の収益が増えることで、選手の取り分にも反映されることに期待 | 試合数が増えることで放映権料やチケット収入の増加が見込める |
サラリーキャップとサラリーフロア
何といってもこのテーマが、最も大きな焦点となることが予想されます。
これは、前回の交渉時(2021-2022年)ロックアウトの核心であり、今回も避けられない最大の対立点です。
タンキング
球団が意図的に戦力を落とし、短期的な勝利よりも長期的な再建を優先する戦略を指す。特に年俸総額を抑えて支出を最小限にしてドラフトや育成に賭けるケースが多い。

主要プロリーグ(NFL、NBA、NHL)でサラリーキャップ未導入はMLBだけ
若手選手の報酬とサービスタイム
Embed from Getty Images 2025年
ザ・プレーヤーズ・パーティーでインタビューに応える選手会トップのクラーク氏。
現行の制度では、活躍している若手選手が年俸調停権(約3年)やFA権(6年)獲得までの期間、能力に見合った報酬を得られていないという問題があり、これは前回の交渉でも争点の一つでした。
選手会側から挙がる主張としては、
などが予想されます。
サービスタイム(在籍期間)の操作
制度の隙間を利用して、選手のFA権獲得時期を意図的に遅らせる行為のこと。MLBではメジャー在籍日数172日で「1年」とカウントされ、FA権獲得には通常6年分のサービスタイムが必要。ここで球団が選手のメジャー昇格のタイミングを数日ずらすだけでFA到達を丸1年遅らせられる仕組み。

才能を埋もれさせてしまうのは確かにもったいない!
ロックアウトの可能性
MLBの内情に詳しい人や専門家たちは、今回もオーナー側がロックアウトを実施する可能性が非常に高いと見ています。
ESPNのジェフ・パッサン記者などは、オーナーサイドがサラリーキャップの導入を強く推し進める場合、前回99日間に及んだロックアウトどころではなく、
2027年レギュラーシーズンの一部が失われる事態にまで発展する可能性がある
と警鐘を鳴らしています。
ロックアウト
オーナー側が選手たちに対して球団施設への立ち入りを禁止し、給料の支払いをストップさせるなどの措置を取り、労使交渉を有利に進めようとする強硬手段。
大谷選手が及ぼした意外な交渉テーマ
また、球界のスーパースター大谷翔平選手の契約が、はからずも労使交渉が絡む制度的な火種となり、現行システムの問題点を表面化させる事態に発展。
本人の意図とは別のところで、以下2つのテーマが交渉の重要な論点として浮上してきました。
1.超大型契約の「後払い」への規制
よく知られるように、
大谷選手とドジャースは、10年7億ドルの契約のうち97%にあたる6億8000万ドルを契約終了後の10年間に支払う、という前例のない「後払い」方式を採用。
オーナー側からの要求予測
これによりドジャースは、「ぜいたく税」の算定に使われる年平均年俸を大幅に引き下げました(ぜいたく税上の年俸は約4600万ドルに抑制)。
オーナーたちは、この実質的な負担額の乖離を問題視、
税金を気にすることなく他有力選手(フアン・ソト選手など)も獲得できる ”抜け穴” として後払い契約を利用したと主張したのです。
今後の交渉の席では、超大型契約に際しては後払いの上限を厳しく規制したり、あるいは大谷契約にみられる年間平均額を下げるような繰り延べ報酬そのものの禁止などが予想されます。
2.「ぜいたく税 」の基準額と罰則強化
期せずして大谷翔平選手との契約は、ドジャースのような大規模市場球団にとって「ぜいたく税」が支出の抑止力にはならないことを示す事例となってしまいました。
当然ながらオーナー側はこれを根拠に、制度の抜け道を塞ぎ、ぜいたく税を実効性のある支出抑制策へと強化・修正することを強く求めるはずです。
MLBの「ぜいたく税」
球団の年俸総額が一定基準額を超えた場合に追加で課税が課される制度で、資金力のある球団がスター選手を独占しないようにするための仕組み。
基準額例(2025年)約2億4100万ドル(約380億円)
オーナー側からの要求予測
ぜいたく税の計算方法を実際の年俸総額に近い形で算定するよう変更を求めることや超過額に応じた高い税率の設定、算定ルールの厳格化なども考えられます。
また、長期契約の上限設定で現在の10年以上を最大7~8年までに制限するとか、ドラフト指名順位や指名権下ろしといった追加ペナルティの強化なども交渉材料になるかもしれません。
ファンへの影響
いずれにしても、これらの規制が成立すれば、将来的に他のトッププレーヤーがFAとなった時、もう大谷のような柔軟な契約を結ぶことはできなくなるでしょう。
選手年俸の「公表上の契約総額」と「ぜいたく税に計上される額」のギャップがなくなり、球団の財政状況がより透明になる反面、
ファンの夢を膨らませる戦略的な大型チーム編成の実現が遠のく可能性が出てきそうです。
選手とコミッショナーの衝突と「圧力」報道
Embed from Getty Images 2025年
マンフレッド氏が、2027年シカゴ・オールスターゲーム開催についてインタビューを受ける。
ここで、労使間の緊張が表面化した最も具体的な事例を紹介。
それは、フィリーズのブライス・ハーパー選手とロブ・マンフレッドコミッショナーの間で起きた激しい口論と、それに続く上層部からの圧力についてのニュースーー。
この予期せぬハプニングは、まさに今後の交渉の険しさと深刻さを象徴しているかのようです。
衝突の核心:サラリーキャップ
この諍い(いさかい)は2025年7月下旬、コミッショナーが毎年行っている球団訪問の一環としてフィリーズのクラブハウスを訪れた際に発生したもの。
この出来事は、スター選手がサラリーキャップ導入の動きに対し、どれほど感情的かつ断固として抵抗しているかをリーグ全体に示しました。
上層部からの圧力:「溝に落ちるぞ」発言
口論自体も衝撃的でしたが、さらに深刻なのはその後に報じられた「圧力」の件です。
これらの報道に対し、MLB機構やハーパー選手側からの公式なコメントはほとんどありません。
しかしデローサ・ジョーク?はさておき、
「溝に落ちる」発言の真偽とその発言者が誰かについては、いまだに憶測が飛び交っています。
この一件が交渉に与える影響
この圧力の件は、今後の労働協約交渉にどのような影響を与えることが予想されるでしょうか。
もしも本当に脅迫的な発言があったとすれば、オーナー側と選手会の不信感は決定的に悪化、
交渉のテーブルに着く前から感情的な対立と警戒心が渦巻き、妥協点を見つけることがさらに難しくなってしまいそうです。
しかもハーパー以外にも、MLB労使交渉に関する両者間の激しい対立や言葉の応酬は止むことなく漏れ伝わってくる状況。
特にマンフレッド・コミッショナーの発言や行動をめぐっては、時期を前後して、選手会側が強く反発する事例が複数報じられました。
他にもあった!由々しき対立事案
コミッショナー「スパイ疑惑」問題
米スポーツメディアは2025年10月末〜11月初頭にかけ一斉に報道、
パンデミック禍での2020年給与交渉時、選手代理人ジム・マレー氏がマンフレッド・コミッショナーと頻繁に連絡を取り合い、選手会の提案を ”握りつぶす” よう助言していたと報じました。
選手会はこれを「極めて露骨」「許されない裏切り」と糾弾、声明でマンフレッド氏の姿勢を強く批判しています。
ロックアウトをめぐる対立
2025年3月、選手会専務理事トニー・クラーク氏は、コミッショナーの労使停止を示唆した発言に反応。
「間違いでなければ、リーグはすでに労使停止があると公言している。“Unless I am mistaken, the league has come out and said there’s going to be a work stoppage.”」
と強く非難。
「ロックアウトは選手の仕事を奪い雇用を人質に取る手法だ」として、オーナー側の戦術を「野球の発展につながらない。“not about growing the game.”」と断じました。
選手からの直接批判
2025年6月末、ジャイアンツのマット・チャップマンは、
「マンフレッドは自分の筋書き通りに交渉を進めようとしている。“Manfred is trying to push negotiations along according to his own script.”」
と公然と批判。
さらに、”選手の声を聞かず、オーナー側の利益を優先する筋書きが見える” と強調したとされ、
選手がコミッショナーの姿勢を名指しで非難する異例の事態にまで発展しています。
MLB選手会 執行小委員会の現役選手
難しい対立構造が見えてきたところで、最後は「選手会」についての情報をシェア。
次期労働協約(CBA)交渉を担当する主な現役選手ですが、
「選手会代表(各球団1名)」と、その中の最高幹部グループ「執行小委員会」いずれかに配属。
執行小委員会は、各球団代表とは別に選手会全体から選ばれた少数精鋭メンバーで構成され、交渉戦略の中核的な役割を担います。
2025年12月現在の主要な現役メンバーは以下の通り(一部抜粋)
| 氏名 | 現所属球団(2025) | 役職 | 備考 |
|---|---|---|---|
| トニー・クラーク | – | 専務理事 | 元選手(1995-2009) 執行部トップであり交渉の顔 |
| フランシスコ・リンドーア | メッツ | 選手会代表 | 組織内でも影響力の大きいスター選手の一人 |
| マーカス・セミエン | レンジャーズ | 選手会代表 | 執行小委員会のメンバー |
| クリス・バシット | ブルージェイズ | 選手会代表 | 執行小委員会のメンバー |
| ジャック・フラハティ | タイガース | 選手会代表 | |
| ランス・マッカラーズ・ジュニア | アストロズ | 選手会代表 | |
| ブレント・スーテル | レッズ | 年金委員会代表 | 執行小委員会メンバー 選手会が選ぶマービン・ミラー賞受賞者 |
| ジェイク・クロネンワース | パドレス | 代替選手会代表 (補佐/代役) | |
| ポール・スキーンズ | パイレーツ | 代替選手会代表(補佐/代役) |
なお補足として前出のブライス・ハーパーですが、上記の選手会公式メンバーではありません。
ですが、野球界における最高レベルの選手であり、その発信力は非公式のリーダー格。
彼の「声」は選手会にも絶大な影響をもたらし、交渉において役職以上に重要な意味を持ちます。
選手会代表者の選出プロセス
アメリカのプロスポーツ労働組合の中でも非常に組織化され、選手の意見をボトムアップで集約する仕組みが築かれているとされる「MLB選手会」。

「自由市場」への支持が強固な結束力を生んだんだね!
そのメンバー選出のプロセスを追います。
選出プロセスのポイント
- プロセスは、まず現場の選手による直接投票で選ぶ選手会代表決めからスタート。
- 代表に選ばれることで自動的に選手会の主軸となる執行委員会の一員として、現場の意見を吸い上げ、組織中央の意思決定へと落とし込み反映させる。
- 執行委員会の中からさらに厳選し、選手会活動をスムーズに進め重要な交渉場面では迅速なサポートを行う少人数のリーダーグループ執行小委員会を形成。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 球団レベルの代表者
2. 執行委員会の構成と選出
3. 執行小委員会の選出
次期労使交渉は、
「誰が」「どれだけ」リーグの収益を手にするのか?
という、MLBという巨大スポーツリーグの、ビジネスモデルにおける根本的な問題を話し合い再構築を試みる場。
交渉の期限である2026年12月に向けて、選手会側、オーナー側、両サイドから飛び交う発言や提案はすべて、「メジャーリーグベースボールの未来への投資」をめぐるガチの駆け引き。
ここから1年、…タイムリミットまでの期間、その行方を注視し、MLBの歴史が動く瞬間を一緒に見届けていきましょう。
※ 今後、大きなトピックがあり次第つど更新してまいります。
