こんにちは!
ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。
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ドジャースタジアムのブルペン。投手大谷の姿が見える。
2026年のドジャースは、ブルペンの再編成が行われるシーズンになるのでしょうか。
新たに加わったMLB屈指のクローザー、エドウィン・ディアスはロサンゼルスでもこれまで通りの支配力を発揮できるのか?
一方で、2025年に大きく崩れながらも、球質とフォームは健在と評価されるタナー・スコットの役割は?
キャリアの曲線が異なる二つのピースが同じブルペンで交差し、新シーズンを迎えるーー。
両者にまつわる報道や記事、各種データや実績をもとに対比することで、来季の救援陣が抱える課題と可能性が浮かび上がってくるかもしれません。
オフの今、ファンにとっては暇を持て余すこの時期に詳しく見ておくことにしましょう。
同い年でまったく異なる二人のキャリア曲線
2025年12月11日(日本時間12日)、MLB.comのブレント・マグワイア記者はエドウィン・ディアスを扱った記事の中でドジャースでのタナー・スコットにも言及。
初年度の防御率4.74、キャリア最低の奪三振率25.2%を挙げ、結果として苦戦を強いられた彼はクローザーの座を失い、最終的に(故障とパフォーマンス低下が重なった影響もあって)ポストシーズンでは一度も登板しなかった、と書いていました。
確かに数字は嘘をつきません、ここでは、
- 年齢
- キャリア通算成績
- ピーク時の数値データ
- 不調期の落ち込み方
- 2025年時点の状態
まず、二人の公式成績データから数字だけを抽出しキャリア曲線の対比を整理します。
※ 成績は主に、MLB.com、Baseball-Reference.comの数値データを採用
数字で見るキャリア曲線の対比
- 年齢
| 投手名 | 生年月日(現年齢) | MLBデビュー | MLB在籍年数 |
|---|---|---|---|
| タナー・スコット | 1994/7/22(31歳) | 2017年 | 8年 |
| エドウィン・ディアス | 1994/3/22(31歳) | 2016年 | 9年 |
同じ年齢ですが、ディアスのほうがスコットより1年早くデビューした分、プロとしての経験の積み上げが長い、ということになるでしょうか。
- キャリア通算成績(2025年終了時点)
ディアスはセーブ数・奪三振・防御率においてかなり勝っており、歴代級クローザーの数字。スコットはMLB在籍年数が短いこともあってか、優秀なリリーフの数値を示しています。
- ピーク時の成績比較
| スコットのピーク(2023–24) | |
|---|---|
| 2023年 | ERA 2.31、104 K、WHIP 0.99 |
| 2024年 | ERA 1.75、22 SV、84 K、WHIP 1.13 |
2023年から2024年にかけて2年連続でキャリアのピークを迎えています。
| ディアスのピーク(2018・2022) | |
|---|---|
| 2018年 | ERA 1.96、57 SV、124 K、WHIP 0.79 |
| 2022年 | ERA 1.31、32 SV、118 K、WHIP 0.84 |
デビュー間もない頃から支配的、1シーズンの不調を乗り越え2022年には完全復活。
- 不調期の落ち込み方の違い
| スコットの不調期(2025) | |
|---|---|
| 2025年 | ERA 4.74、11被本塁打、23 セーブ、WHIP 1.26 |
配球の偏りで球種の見極めが容易になり、打者が対応しやすくなったことで狙い球を絞られ読まれまくり強打を浴び続けるという悪循環、また重要な局面での崩れも目立ちました。
| ディアスの不調期(2019) | |
|---|---|
| 2019年 | ERA 5.59、15 被本塁打、WHIP 1.38 |
キャリア最大のスランプ。ただ全体的に毎試合悪かったわけではなく、ドジャース戦で8–5のリードを守れず炎上するなど、致命的な場面での被弾が集中し数字が大崩れした一年でした。
- 2025年時点の状態
スコットの2025年シーズンは、球威は落ちておらず球質は維持しながらも結果は大きく悪化。
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ドジャース移籍後の4月、カブス戦に臨むスコット投手。
ディアスの2025年シーズンは、データ上は球速低下が指摘されつつも結果は依然トップクラス。
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5月、メッツ時代のディアス投手はドジャース戦を制し5対2で勝利。
球速推移と年齢曲線の比較
2025年末時点で共に31歳と同年齢の二人ですが、事実ベースでの球速推移を比較すると、それぞれが描く年齢曲線が見えてきます。
球速推移の比較
年齢を重ねても球威は落ちずむしろ伸びている稀有なタイプ。球速のみに絞ればキャリアのピークはまだ先にあるのか?と成長の余地を感じさせてくれます。
僅かな球速低下はあっても、より高品質なスライダーとのコンビネーションで打者を圧倒するスタイルへと進化。結果を出している点(ERA 1.63)が別格です。
球速推移 × 年齢曲線
| 項目 | タナー・スコット | エドウィン・ディアス |
|---|---|---|
| 2025年の結果 | ERA 4.74(不振) | ERA 1.63(エリート維持) |
| 球速推移 | 維持~上昇(波型変動傾向) | 緩やかな低下(凪型進化傾向) |
| 年齢曲線 | 不安定(変動期) | 安定(成熟期) |
数字のみでの対比でいうと、
31歳にしてスコットは球速そのものはかえって維持~上昇している一方、ディアスはピーク時よりかは若干速さを落としています。
にもかかわらず、成績は全く逆で、ディアスは球速低下後も圧倒的投球術を維持し、スコットは球質が良くても安定性を欠き大きく揺れてしまいました。
二人の年齢曲線は、まったく異なる軌道を描いていることがわかります。
ちょっと寄り道…ブレイクタイム~break time~
ここでちょっとブレイクタイムーー。
数値をもとに指標の計算をする際、絶対に押さえておきたいポイントについて触れておきます。
当記事の中でもたびたび登場している「防御率(ERA)」、
これは投手評価の基本指標ですが、意外と見落とされがちな ”計算上の落とし穴” があるんです。特に注意したいのが、MLB特有の投球回数表記。

あぁ…通常の数学で用いる小数点の表し方じゃない特殊な表記形式ルールね⁈
投球回数の「.1」「.2」は小数ではない
MLBの投球回数は、
を意味するもの。となると、
投球回数表記が「イニング.アウト数」という独特の形式を用い、小数点ではなく別の単位を表しているため、この変換をしないと防御率は必ず誤差が生じてしまいます。
ERAの公式は「9 × 自責点 ÷ 投球回数」
つまり、
MLBの投球回数、たとえばディアスの通算イニング数「519.1」の「.1」、そしてスコットの通算イニング数「425.2」の「.2」は小数ではなくアウト数(.1=1/3、.2=2/3)を指すもの。
ですので、そのままの数字を公式に当てはめるのではなく、
イニング数すなわち投球回数をいったん正しく小数化して初めて、ERAは正確な値になります。

小数点に見える「.1」「.2」のアウト数を、正しく小数化するのね!
MLBの公式記録もこの換算を前提にしている
MLB公式サイトやBaseball-Referenceが表示する防御率(ERA)は、必ずアウト数を小数化した投球回数を使って算出されています。
- 519.1 は「519.1回」ではなく「519回と1アウト」
- 425.2 は「425.2回」ではなく「425回と2アウト」
これを必ず 、
に変換してからERAの公式に代入して計算するわけです。
2026年シーズン 救援陣の展望
ここまでは数字を中心に振り返ってきましたが、2026年のドジャース救援陣を語るうえで欠かせないのは、数字だけでは見えてこない物語の部分です。
ということで最後は、来季のブルペンを支える二人のドラマに目を向けていきたいと思います。
試合終盤の主役は?新ブルペン二つの物語
エドウィン・ディアスlマウンド登場で球場を支配する劇場型クローザー
dodgers
Los Angeles Dodgers
ドジャースの25シーズンは試合終盤、特にラスト間際のイニングで苦しむ場面が目立ちました。が、そこへ加入したのがは9回の壁を打ち破る男、まさに救世主現るです。
そしてディアスの名前を聞いて、まず思い浮かぶのはやはり彼の登場曲でしょう。
メッツ時代、曲が流れた瞬間に球場全体が総立ちになり、ファンが一斉にスマホをかざす光景はじつに圧巻でMLB名物となりました。
そしてそれを象徴した年が2022年。
シーズン終盤、メッツが大事な試合を迎えた夜、登場曲を手がけたDJティミー・トランペット本人が球場に現れ、このEDMトラックの生演奏を始めたのです。
ーーライトが落ち、トランペットの音が響き、ゆっくりとブルペンから歩み出るディアスの後姿をカメラが追いかけるーー
とたんに球場はコンサート会場と化しボルテージはMAX、相手チームの選手さえ思わず振り返って見届けてしまうほどのインパクト!
この出来事は、
クローザーの登場がここまでエンターテインメントになるのか!
と全米で話題になり、ディアスの名を一気に押し上げました。
先日行われた入団会見でも楽曲を使い続けるか問われ、当人は「ロサンゼルスのファンにもあの瞬間を楽しんでほしい」とコメント。
熱狂のドジャー・スタジアムでディアスが、「Narco」の旋律を背にマウンドに立つ姿を想像するだけで、今から胸アツなファンも多いはず。
彼の登板は球場の空気を一変させ、試合の流れをドジャースのペースへと一気に引き込む勝利のサインとなることでしょう。
タナー・スコットl静かな覚悟で試合を締める再生の左腕
mvpsportsgroup
tannerscott
スコットは、昨シーズンに大型契約でドジャースにやってきました。
彼の物語を紐解いてみると、
オリオールズ時代は剛腕ピッチャーとして期待されながらも制球難に悩まされる日々。ボールが抜け、荒れ、時に自滅する、なんて時期もあったようです。
しかし、彼はそこで終わりませんでした。
マーリンズ移籍後はフォームの見直しに着手。無駄な力を抜き、リリースポイントを安定させ、荒削りの剛腕から静かに仕留める左腕へと変貌。
当時のコーチは語っています。「彼は才能で投げていた投手から考えて投げる投手に変わった」
スコットを取り上げる上でもう一つ、大谷翔平という “世界最高峰打者” との対峙も外せません。
相手投手として過去に何度も対戦し、そのほとんどを制圧。
- 2024年地区シリーズでは4打席4奪三振という圧巻の投球でスタンドを沸かせる
- レギュラーシーズンとポストシーズン合わせても大谷に許した安打はわずか1本
そのキラーぶりは、偶然では説明できない確かな実力に裏打ちされたものでした。
球界の誰もが知る才能の持ち主ですが、ドジャース1年目は大崩れ、…期待が大き過ぎたせいでしょうか、あるいは過度なプレッシャーがかかったのかもしれません。
ファンやメディアからは厳しい声も聞かれ、悔しいシーズンだったことは十分に想像がつきます。
けれども今後は、ディアスという絶対的抑えが9回に君臨することで、彼からクローザーとしての過剰な重圧が取り除かれ、静かな覚悟が生まれるかもしれません。
本来の持ち味を活かし、試合の重要な局面でリリーフの要(かなめ)、セットアッパーとして躍動することだって考えられます。
大谷をも封じた確かな経験を自信に、昨季の無力感を力に代え、終盤を託された左腕が再び輝きを取り戻すシーズンに期待大です。
史上最強ブルペンへの期待
ドジャースの勝利方程式が完成?
2025シーズン、試合終盤に漂いまくっていた皆の不安は、一人の加入によってもう一人の覚醒をうながし、今や最高の楽しみへと変わりつつある予感ーー。
世界一カッコいいトランペットが鳴り響く中、リードを守り切ったスコットからディアスへと勝利のバトンが渡るシーンを想像しても、…何だかもうリアル過ぎます。

ディアス×スコットの二枚看板が描く新ブルペンドラマか~!
そしてまた、この二人が目指すのはただ個人が活躍することではありません。
ブランドン・ゴームズGMがディアス加入時に語ったように、
彼がもたらす献身性は、ドジャースの文化に完璧に合致しているもので、“the selfless spirit that he brings fits perfectly with the Dodger culture,
チームを最優先する考え方を象徴しています。embodies the team‑first mentality that we prioritize.”
それはまさしく、球団の伝統である「チームの勝利のために自らを捧げる」スピリットを共有することにあります。
勝利への流れを固めるセットアッパー(中継ぎ)と絶対的なクローズ(抑え)、
この最強のリレーが実現するとなれば、ドジャースのカラーを体現する史上最強のブルペンとなってしまうのではないでしょうか?!
