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新システムABS(ロボット審判)で有利なのは?MLB選手匿名アンケート

MLB

こんにちは!

ちょっかんライフです。

日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページ――。

2026年シーズンからメジャーリーグ(MLB)に本格導入される「ABS(自動ボール・ストライク判定)チャレンジ制度」。

審判の判定に対し、選手がトラッキングシステムによる即時確認を要求できるこの画期的なシステムは、過去2年のスプリングトレーニング、マイナーリーグ、そして2025年のオールスターゲームでの試行を経て、いよいよメジャーの舞台に登場します。

”デジタルの目”が野球の戦略を根底から覆そうとするなか、現場のプロフェッショナルたちは、誰がこの新制度の勝者になると予想しているのでしょうか。

今回、MLB公式サイト(MLB.com)は各球団の番記者を通じて現役選手たちに大規模なアンケートを実施。’匿名’ を条件に、ライバルチームの中で「誰がこの制度を最も有利に使いこなすか」という本音を調査しました。開幕を目前に控えた今、メジャーリーガーが選んだ各部門のキーマンたちを紹介します。

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ABSチャレンジ:選手が選ぶ「新制度のキーマン」調査報告

 打者部門 

順位・選手名所属球団得票数
1位・フアン・ソトニューヨーク・メッツ33票
2位・アーロン・ジャッジニューヨーク・ヤンキース9票
3位・スティーブン・クワンクリーブランド・ガーディアンズ6票
4位・アレックス・ブレグマンシカゴ・カブス5票
5位・カイル・シュワーバーフィラデルフィア・フィリーズ3票

 投手部門 

順位・選手名所属球団得票数
1位・J・バーランダーデトロイト・タイガース10票
2位・マックス・シャーザートロント・ブルージェイズ7票
3位・山本 由伸ロサンゼルス・ドジャース6票
4位・ポール・スキーンズピッツバーグ・パイレーツ5票
5位・ジェイコブ・デグロムテキサス・レンジャーズ4票

 捕手部門 

順位・選手名所属球団得票数
1位・カル・ローリーシアトル・マリナーズ16票
2位・J.T.リアルミュートフィラデルフィア・フィリーズ15票
3位・パトリック・ベイリーサンフランシスコ・ジャイアンツ11票
4位・サルバドール・ペレスカンザスシティ・ロイヤルズ7票
5位・ウィル・スミスロサンゼルス・ドジャース6票

それでは、なぜこれらの選手が選ばれたのか、それぞれの部門ごとに詳しく見ていきましょう。

ABS(自動ボール・ストライク判定)の導入により、打者の選球眼は単なる技術から、試合を支配する「戦略的武器」へと進化します。

際どい球を見送るだけでなく、審判の誤審をその場で覆し、四球をもぎ取ったりカウントをリセットしたりすることが可能になるからです。

  1. フアン・ソト:メジャー最高峰の選球眼。昨春のチャレンジ成功率100%。
  2. アーロン・ジャッジ:低め誤審に苦しんできた分、チャレンジの恩恵を受ける可能性大。
  3. スティーブン・クワン:小柄な体格を活かした正確なゾーン把握。コンタクト能力も抜群。
  4. アレックス・ブレグマン:規律ある打撃スタイル。データ上も高い成功率が期待される。
  5. カイル・シュワーバー:見た目以上に緻密なゾーン管理。際どいコースへの拘りが強い。
ゴールドスタンダード(至高の基準)

この部門で、全30球団中27球団の選手から票を集め、圧倒的な支持を得たのがフアン・ソトです。

  • スタッツの裏付け: 2025年、ソトのボール球へのスイング率(チェイス率)はわずか15.9%でメジャー全体1位。さらに球団新記録の127四球を記録するなど、その眼の正確さはもはや精密機械の域に達しています。
  • 現場の評価: あるア・リーグ東地区の選手は彼を「ゴールドスタンダード(至高の基準) “He is the goldstandard,”」と称賛。昨年のスプリングトレーニングでも、ソトは4回のチャレンジすべてに成功しており、ABS環境下での彼は「最強の天敵」となるでしょう。
「身長」がチャレンジの成否を分ける?

興味深いことに、選手の体格とチャレンジの成功率には明確な相関関係があることが、マイナーリーグTriple-A)のデータから明らかになっています。

  • 高身長ゆえの不利益: 6フィート7インチ(約201cm)のアーロン・ジャッジのような長身の選手は、ストライクゾーンが広く、特に膝元の低めのボールが審判の目にはストライクに見えてしまうという体格ゆえのハンデを抱えてきました。
    ・ 昨シーズン、ジャッジよりストライクゾーンを外れた球を誤判定された回数の多い打者はメジャー全体でわずか13人しかいません。
    ・自分のせいではない「不運な誤審」をテクノロジーで即座に修正できるABS制度は、これまでの損失をすべて取り戻す最大の味方になると期待されています。
  • 小柄な体格の優位性: 逆に、スティーブン・クワンやアレックス・ブレグマンのような小柄な打者(170cm〜180cm前後)は、データ上チャレンジ成功率が高い傾向にあります。
解説:なぜ小柄な方が有利か?

物理的にストライクゾーンがコンパクトであるほど、打者は「自分のゾーン」を視覚的に把握しやすくなります。逆にゾーンが広い長身選手は、わずかなズレを感知するのが難しくなります。この「視覚的な座標の正確さ」こそが、チャレンジ制度における最大の武器となります。

マウンドからホームベースまで18.44メートル。爆発的なリリース動作の直後、ミットに吸い込まれる球の軌道をミリ単位で把握するのは、投手にとって至難の業です。

今回のアンケートで最も多かった回答が「なし(誰もいない)」であったという事実は、マウンドからの視界がいかに不確かで投手の自己判定がいかに困難であるかを物語っています。

「投手は自分の球をひいき目に見てしまう」「捕手の方がよっぽど見えている」というシビアな声が大勢を占めるなか、それでも名前が挙がったのは百戦錬磨のベテランと精密な制球力の持ち主だけでした。

  1. ジャスティン・バーランダー:すでに今春チャレンジ成功。ベテランの直感は健在。
  2. マックス・シャーザー:飽くなき勝利への執着と、長年の経験によるゾーン把握。
  3. 山本 由伸:極端なまでのコマンド力。狙い通りに投げるからこそ「ズレ」が解る。
  4. ポール・スキーンズ:若手ながら冷静なマウンドさばき。新時代の旗手。
  5. ジェイコブ・デグロム:揺るぎない圧倒的球威と正確な制球の両立。
レジェンドに許された「異議あり!」

最多得票を集めたのは、ジャスティン・バーランダーとマックス・シャーザーの二人です。

  • 経験という武器: 数千イニングを投じてきた彼らの「エースの直感」は、選手間でも別格の信頼を得ています。実際、バーランダーは今年3月17日の登板で早くもチャレンジを成功させ、その眼の確かさを証明しました。
  • 精神的な優位:マウンドからでは、正直なところ正確な判定なんてできないよ “I don’t think pitchers see it very well,”」といった選手の本音が飛び交う一方で、「彼らクラスのレジェンドなら、審判に対しても堂々と権利を行使できるはずだ」という、実績に裏打ちされた説得力も評価の対象となっています。
「精密機械」に寄せられる期待

ベテラン勢に次いで高い支持を得たのが、山本 由伸です。

  • 異次元のコマンド: メジャーの強打者たちは、山本の「意図した場所へ正確に投げ抜く技術(コマンド)」を高く評価しています。
    ・「彼はあれだけ投げたいところへ自在に投げられるから、きっと(チャレンジも)上手いかもしれないね
    “He can put it wherever he wants it, so he might be good at it,” 」という推察が、異例の得票数に繋がりました。
  • 新たな役割: 投手に全権を与えるべきではないという声が多いなか、山本のような精密なコントロールを持つ投手だけは、例外的に「自己判定」を許される存在になるかもしれません。

ABSの導入により、捕手の役割は歴史的な転換点を迎えています。これまで捕手の花形技術だったフレーミング(ボール球をストライクに見せる技術)は、デジタルの前では通用しません。

代わりに求められるのは、判定の瞬間に「今のボールはゾーンの端をかすめたか」を冷徹に見極めるチャレンジの司令塔としての判断力です。

投手が自分の球を信じすぎる、あるいは判断を迷う傾向にあるなか、捕手こそがチームの「異議申し立て」の全権を握る存在になりそうです。

  1. カル・ローリー:昨春成功率100%。大舞台での判定覆し実績も十分。
  2. J.T.リアルミュート:13年間の経験が導き出す、迷いのないチャレンジ判断。
  3. パトリック・ベイリー:今春の成功率83%と絶好調。新時代の守備指標リーダー。
  4. サルバドール・ペレス:ベテランの風格。投手との強固な信頼関係が強み。
  5. ウィル・スミス:冷静沈着なリードに加え、確かなゾーン管理能力を保持。
チャレンジ成功率「100%の男」

選手間投票で1位に輝いたのは、シアトル・マリナーズの正捕手、カル・ローリーです。

  • 驚異の実績: 昨年のスプリングトレーニングでは9回中9回のチャレンジを成功(成功率100%)させるという神業を披露。さらに2025年のオールスターゲームという大舞台でも、タイガースのエース、スクーバルの投球で見事に判定を覆してみせました。
  • 現場の信頼: 同地区のライバル選手は「彼はもともと際どいコースを拾うのが上手いが、それ以上に『入っているか、外れているか』を完ぺきに把握している “He usually gets the close ones anyways, but I think he’ll know whether it’s actually on or off,”」と脱帽しています。今春はWBC出場を前に、あえて積極的にチャレンジしてシステムを ”学習” する姿勢も見せており、その探究心は群を抜いています。
名手たちの「知覚」の転換

2位のJ.T.リアルミュートや3位のパトリック・ベイリーといった守備の名手たちも、高い適応力を見せています。

  • ベテランの眼: メジャー13年目のリアルミュートに対し、選手たちはその豊富な経験に基づくゾーンの見極め能力がチャレンジ制度でも最大の武器になると予想しています。
  • データの裏付け: 若き名手ベイリーは、今春10回以上のチャレンジを行った捕手の中で成功率83%という驚異的な数字を叩き出しています。フレーミングに長けた捕手は、もともと「どこまでがストライクか」という境界線を誰よりも深く理解しており、そがそのまま新制度での強みへとスライドしているのです。

現場の葛藤と「ゲームチェンジャー」としてのABS

今回の調査で浮き彫りになったのは、「一体、誰が権利を行使すべきなのか?」という現場のリアルな葛藤です。「投手にチャレンジの全権を与えるべきか」という問いに対し、選手たちの答えは「賛成22 vs 反対41」と、否定的な意見が圧倒しました。

なぜ、これほどまでに投手の自己判定は信用されていないのでしょうか?現場からは、ユーモアと自戒を込めた証言が相次いでいます。

  • 「自分なら今日だけで6回は失敗していた」
    精密な投球で知られるクリス・バシット(オリオールズ)でさえ、「マウンド上は動きが激しすぎて、ミリ単位のラインは見えない。捕手とは見えている世界が違うんだ “I don’t believe that pitchers should ever challenge… I mean, if it was up to me, Iwould have challenged probably six [calls] today and got a lot of them wrong.”」と、その限界を認めています。
  • 「全部ストライクに見えてしまう!」
    名手クリス・セール(ブルージェイズ)は、「味方の捕手のキャッチングが上手すぎて、投げた球が全部ストライクに見えてしまうんだ “The way they catch the ball, the way they receive, they make them all look like strikes,”」という、捕手の技術が高すぎるゆえの逆説的な悩みを吐露しました。
  • 「欲張りな心理」と「15cmの誤解」
    ある選手は「僕は欲張りだから、投げた球は全部ストライクだと思っちゃうんだよね “I’m greedy. I think everything is a strike.”」と笑い、別の選手は「昨年マイナーで『絶対ストライクだ!』と確信した球が、実際にはゾーンを6インチ(約15cm)も外れていた。それ以来、チャレンジは捕手に任せると心に決めたよ」という衝撃的な失敗談を明かしてくれました。

野球のドラマを塗り替える「一瞬の静寂」 
ABSチャレンジ制度は、単なるテクノロジーの導入ではありません。それは選手の「自信」という主観と、「デジタル」という客観が真っ向から衝突する、究極の心理戦です。

2026年シーズン、球場を包む一瞬の静寂のあと、大型ビジョンで判定が覆るその瞬間――。

それは野球という伝統的なドラマに、新たな熱狂と戦略の深みをもたらす「ゲームチェンジャー」となるはずです。


【ライトファン向け】専門用語・ルール解説コーナー
用語解説
ABS(自動ボール・ストライク判定システム)コンピュータと追跡技術を用いて、投球が規定のゾーンを通過したかを正確に判定するシステム。
チャレンジ制度審判の判定に疑問がある場合、ABSによる再判定を要求できる権利。
ストライクゾーン本塁上の、打者の体格に応じた一定の空間。ここを通過すればストライクとなります。
フレーミング捕手が捕球の瞬間にミットを動かし、審判にストライクと認識させる伝統的な捕球技術。
コマンド投手が狙ったスポットへ正確に投げ込む、高度な制御能力。
スタッツ選手の価値や傾向を分析するために活用される、あらゆるパフォーマンスの統計指標。
マイナーリーグ(Triple-A;AAA)メジャーリーグの直下に位置するカテゴリー。新ルールが先行導入される「実験場」の役割も果たします。
スイング率(チェイス率)ストライクゾーンを外れた「ボール球」を振ってしまった割合。選球眼の良さを測る重要な指標です。
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