こんにちは!
ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。
メジャーリーグベースボール(MLB)では、オフのこの時期FA市場が賑わいを見せていますが、新シーズンを迎える今こそ、改めて昨季の足跡をたどる良い機会です。
MLB.comでは12月20日(日本時間21日)、担当記者30名全員が選んだという2025年シーズンMLB最高の試合を、リーグ別、地区ごとに、全球団にわたって発表。
本記事ではその中からさらに厳選し、凄い記録&成績を残したゲームをpickしてお届けします。
それでは、一緒に振り返っていきましょう。
MLB昨季振り返り!最高の試合
ナショナル・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ
大谷翔平 ドジャース
NLCS(ナ・リーグ優勝決定シリーズ) 第4戦 vs ブルワーズ
これは単に ’今シーズン最高’ という枠に収まる話ではありません。
大谷翔平がナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第4戦で魅せた3本塁打・10奪三振というパフォーマンスは、野球史における「史上最高の1試合」を語る上で欠かせない伝説となりました。
勝てばワールドシリーズ進出が決まるチームの命運を懸けた運命の第4戦、投手大谷はマウンドで6回無失点の快投を披露。
さらに打者としては3発の本塁打を放ち、そのうちの1本は遥かドジャー・スタジアム場外へと消えていきました。
シリーズ序盤の3試合はスランプに苦しんでいた同選手ですが、この一戦での爆発によりNLCSのMVPを受賞。
前年に決めた「50-50(これも凄い!)」のマイアミでの一戦を塗り替え、これこそが ”ドジャース・大谷翔平” を象徴する最高のパフォーマンスであると世界に知らしめたのです。
Embed from Getty Images 2025年
NLCS第4戦7回裏、3本目のホームランでベンチも熱狂。
伝説が創られる渦中にいると、人はその凄さに麻痺したり一過性の熱狂として流したりしてしまうもの、…..
ーー遠い未来、野球の歴史を紐解く人々が、
本当にこんなことが実際にあったのか!
と、この日の試合を、そしてその時代を生き目撃した私たちを、羨む日がきっと来るはずです。
レギュラーシーズン/パイレーツ vs フィリーズ
ポール・スキーンズ パイレーツ
レギュラーシーズン5月18日 vs フィリーズ
「んっ、サイ・ヤング賞投手のシーズン最高パフォーマンスが、よりによって敗戦試合だと?」と驚く人もいるかもしれません。
この日曜午後のデーゲームで、23歳の誕生日を数日後に控えたスキーンズは球界屈指の強力打線を完全に支配しました。
8イニングを投げて被安打わずか3、与四球1。奪三振は9を数え、シーズンキャリア最多となる22回もの空振りを奪ってみせたのです。
しかし5回、ブランドン・マーシュの内野ゴロの間にフィリーズがこの試合唯一の得点をマーク。
結局、自身初の完投は、0-1での敗戦という形で記録に刻まれることに。
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フィリーズカラーの赤で埋め尽くされたシチズンズ・バンク・パークで投げるスキーンズ。
試合後、メディアから「(記念に)試合球を取っておくか?」と聞かれた彼は、冗談めかしてこう答えました。
まあ、横にアスタリスクを付けて正式認定扱いにしてくれるならね。“only if it gets authenticated with an asterisk next to it.”
アスタリスク『*』は、「ただし〜である」という注釈が付くことを意味します。
通常、完投は9イニングですが、この日は敵地ビジターでの試合で後攻フィリーズがリードしていたため、9回裏の攻撃なしでゲーム終了。
彼は「(普通の完投とはいえない)変テコな記録なんだからさ、ちゃんと注釈をつけてよね」と皮肉っぽく笑い飛ばしたわけです。
8回での完投負けを自虐ジョークで締めるあたり、
スキーンズの圧倒的な実力と、負けてもなお ”ただモノではない” 大物感が伝わる凄いエピソードです。
アメリカン・リーグ・ワイルドカード・シリーズ
キャム・シュリトラー ヤンキース
WCS(ア・リーグ・ワイルドカード・シリーズ)第3戦 vs レッドソックス
2022年ドラフト7巡目でヤンキース入りしメジャー初昇格を果たしたルーキー、
24歳のキャム・シュリトラーはシーズン生き残りがかかる大一番で、圧倒的な投球を披露。
その原動力となったのは、
ネット上での心ないバッシング、そして家族にまで向けられた容赦ない誹謗中傷への怒りでした。
宿敵ボストンのシーズンを終わらせるべく、8イニングをわずかシングルヒット5本、無失点に抑え、奪三振は12を数え、四球は一つも与えずゼロ。
うなりを上げる直球で何度も100マイル(約161キロ)超えを叩き出し、ポストシーズン初登板にして「球団最多奪三振」記録を塗り替え歴史に残るパフォーマンスを見せたのです。
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198cmの高身長から繰り出される剛速球で圧倒。
にしても、気になるのがSNSで繰り返された言葉の暴力でしょう。
シュリトラーはマサチューセッツ州ウォルポール出身で、もともと熱狂的なレッドソックスファンとして育ちました。
つまり、彼がボストン近郊の ’地元っ子’ でありながら、ヤンキースのユニフォームを着てレッドソックスのシーズンを終わらせたという背景が一部のファンを過激化させた一因とされています。
試合後のインタビューで、シュリトラーは失望感もあらわにコメント。
「レッドソックスファンは一線を越えたと思う…自分への批判ならいくらでも受け止めるが、まさか地元の連中が家族を標的にするとは予想もしていなかった」
この発言を受けてメディア各社は、
理不尽で執拗な攻撃を100マイルの剛速球で黙らせた
とドラマチックなストーリーとして報道、全米で注目を集める結果となったのでした。
レギュラーシーズン/アストロズ vs ホワイトソックス
ジェイク・マイヤーズ アストロズ
レギュラーシーズン5月3日 vs ホワイトソックス
最後は、9番打者が殿堂入りレジェンド級の記録を叩き出したという、そんな衝撃と凄さを物語る試合を紹介。
この日、長らく守備の名手と言われてきたマイヤーズが、驚異の打撃力でチームを勝利へと導きました。
その内容はと言えば、4打数4安打、球団タイ記録となる1試合13塁打、そして自己最多の7打点というまさに異次元の活躍ぶり。
さらに驚くべきは、1試合の中で本塁打2本、三塁打1本、二塁打1本をすべて記録したアストロズ史上唯一の選手となったこと、しかもそれを打順9番で成し遂げたことです。
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ある意味「サイクル安打の上位互換」を記録したマイヤーズ。
野球には「塁打(Total Bases / TB)」という指標があります。
- 本塁打 = 4
- 三塁打 = 3
- 二塁打 = 2
- 単打 = 1
マイヤーズが記録した「本塁打2本(8)+三塁打1本(3)+二塁打1本(2)」の合計は13塁打。
これはつまり、
1試合で単打を13本打つのと同じ価値をたった4本のヒットで生み出したことになり、メジャーリーグの歴史の中でも極めて稀な出来事。
もし彼がこの試合でさらにもう1本シングルヒットを打っていれば ”サイクル安打” 達成でしたが、単打の代わりに本塁打を打ってしまった(!)ため、記録上はサイクル安打とはなりません。
けれども、長打だけでサイクル安打の要件を上回ったという点で、インパクト溢れるパフォーマンスとして報じられました。
要は、
一番簡単なはずのシングルヒット(単打)を打たずに、ホームランを2本も打っちゃったーーサイクル安打から一番簡単な単打を抜き、代わりに一番難しい本塁打をもう1本加えたーーサイクル超えの記録を打ち立てたということです。
現在29歳のマイヤーズのキャリアは順風満帆ではなく、深刻な打撃不振とケガとの闘いの日々。
メディアからは「もうレギュラーは厳しいのでは」と囁かれたこともありましたが、たゆまぬ努力でポジションを奪い返すなど、そのひたむきさは別格。
アストロズのエスパーダ監督も、彼の規律正しさと準備の質を非常に高く評価しています。
これは、決してエリートのサクセスストーリーなどではなく、不調を乗り越えた先で職人のような選手が自ら生み出した歴史的物語なのです。
