こんにちは!
ちょっかんライフです。
日常のなかで、直観レーダーにピピピッと引っかかったアレコレを取り上げるページーー。
メジャーリーグベースボール(MLB)において、選手が自分の意志で行き先を決められるようになってから50年以上。
これまで、
多くのスター選手たちが選んだ道が、メジャーリーグの歴史を何度も塗り替えてきました。
中には、たった1人の移籍がリーグ全体の勢力図を一変させ、世界中のファンを驚かせた伝説的な契約も少なくありません。
ここでは、MLBを動かした2つの移籍の核心に迫り、契約に至る決断と真相について深掘りします。
さっそく一緒に見ていきましょう!
残留ではなく移籍を選んだ本当の動機
背景を知るほど深まる謎
2025-26年:ピート・アロンゾ
オリオールズと契約
polarpete20 Pete Alonso
この移籍は、事情を知れば知るほど訳が分からなくなるという奇妙なケース。
アロンゾは2016年ドラフト全体64位でプロ入り以来ずっとメッツ一筋、球界を代表するスラッガーとしての地位を築いてきました。
そして2025-2026年のFA市場においても、メッツは他球団を圧倒する資金力を示す準備が十分にできていたはずです。
対照的に、オリオールズは(良くも悪くも)お金を使わないことで知られた球団。
通常のオフシーズンであれば、オリオールズのような中規模予算のチームが資金力の差で大都市の球団には勝てず、アロンゾ級の選手を逃すのが当たり前の光景でした。
ところが今回は、事態が真逆に動いたのですから驚きです。
アロンゾは5年総額1億5500万ドルという条件でボルチモア行きに合意。
するとそこへ追い打ちをかけるように、一層の混乱を招くようなニュースが飛び込みます。
それは、長年チームの顔だった一塁手に対し、
メッツ側は『高すぎる』と判断し、正式なオファーすら一度も出していなかった。
という衝撃的な内容で、世間をあっと言わせたのでした。
いったい何が起きた??
金満メッツが出し渋り、節約オリオールズが支払ったという意外過ぎる構図から真の背景を探っていきましょう。
成績から読み解く放出の真相
以下に、近年の成績推移をまとめます。
Embed from Getty Images 2025年
8月、メッツ通算253本目のホームランを打ち球団史上最多本塁打記録を更新。
ピート・アロンゾ 成績推移
| シーズン | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS | 特記 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | .217 | 46 | 118 | .822 | ・低打率ながら他数字を量産 |
| 2024 | .240 | 34 | 88 | .788 | ・本塁打・打点が減少 |
| 2025 | .272 | 38 | 126 | .871 | ・キャリアハイの打率 ・打点リーグ2位 |

エッ?昨季は成績を巻き返してるじゃん!
アロンゾは2025年、近年で最高の部類に入る素晴らしい成績を残しました。
これを見るとメッツがアロンゾを手放した理由は、成績の不振ではなく、ひょっとして好成績すぎて球団の予算計画、つまりコンフォートゾーンを超えてしまったということなのでしょうか。
金額から読み解く契約の真相
ボルチモア・オリオールズとの5年1億5500万ドルを現在の為替レートで換算すると、以下のようになります。
日本円での契約総額(2025年12月時点のレート1ドル=約156円)
- 総額:約241億8000万円
- 年平均:約48億3600万円
この金額規模を踏まえると、最初に触れた意外過ぎる構図(=金満球団が引いて、節約球団が巨額を投じた)が、よりリアルに感じられるのではないでしょうか。
と同時に、ピート・アロンゾのオリオールズへの移籍は、彼にしてみれば「自分を最も高く、かつ長期的に評価してくれる場所」を選んだ当然の結果と言えそうです。
二刀流の未来を守るために選んだもの
夢を託した理想の環境
2017-18年:大谷翔平
エンゼルスと契約
Embed from Getty Images 2017年
入団会見を行ったアナハイムのステージに立ちスピーチ。
メジャーデビュー前からすでに米球界を虜(とりこ)にしていた日本出身の二刀流スター、大谷翔平を巡る争奪戦はその年のオフ最大の関心事となりました。
そしてMLBの全30球団が興味を示しプレゼンした結果、多くの人々が衝撃を受けたのが、
最後に大谷がエンゼルスを選んだこと、
特に同じロサンゼルス近郊を拠点とする強豪ドジャースを蹴ったという事実。
当時のエンゼルスGMビリー・エプラー氏によれば、最終的な決め手は球団が持つ「家族のような温かい雰囲気 “family-like atmosphere”」と「居心地の良さ “comfort level”」だったといいます。
にしても、なぜエンゼルスだったのでしょう?…ほかに理由は??
大谷が今日につながる伝説的な第一歩を踏み出した、メジャーでの原点について振り返ります。
入団までの異例づくしのプロセス
大谷はポスティング後すべての球団からアプローチを受け、そこからエンゼルス、ドジャース、マリナーズ、ジャイアンツ、パドレス、レンジャーズ、カブスの7球団に絞り込みました。
通常、FA市場は資金力を軸にして動きますが、2017年の大谷翔平ラブコール合戦は異質。
名乗りを上げたどの球団も平等なスタートラインに立ち、純粋に熱意とビジョンだけで競い合ったMLB史上最もピュアで、最も熾烈なドラフト会議だったといわれます。
名門ヤンキース門前払いの衝撃
実際この争奪戦が際立ったのは、大谷があっさりと東海岸の名門を切り捨てた瞬間。ヤンキースのキャッシュマンGMが、面談すら断られた後に記者団の前で、
「(大谷側から)書類選考で落選したと連絡があった」
と発表した時の呆然とした表情は今でも語り草になっているほど。
大谷は当時23歳、MLBルール(25歳ルール)によってどの球団とも格安のマイナー契約しか結べませんでしたが、その限られた条件下でも球団間では以下のような格差がありました。
大谷翔平オファーの格差比較表
| 比較事項 | エンゼルス(獲得!) | レンジャーズ / マリナーズ | ドジャース / ジャイアンツ等 |
|---|---|---|---|
| 契約金(一時金) | 約231万ドル (約2.6億円) | 約353万ドル (約4.0億円) | わずか30万ドル (約3400万円) |
| 提示額の順位 | 最終候補7球団中 3位 | 最終候補の中で 最高額 | 規定により 最低額 |
| 1年目の年俸 | 約54.5万ドル (約6000万円) | 同左(メジャー最低保証額) | 同左(メジャー最低保証額) |
| 2年待った場合の予測 | – | – | 約2億ドル〜 (約220億円〜) |
| 大谷が選んだ理由 | 真の絆(True Bond) | 条件面(金額)では勝っていた | 名門のブランド力はあった |

自分を100%信じて進むってホントにカッコいい!
選んだのは「絆」直感した心の結びつき
当時、なぜヤンキースやドジャースのような大都市の名門ではないのか?」という記者の問いに対し、代理人のネズ・バレロ氏が唯一の正解として使ったのが「絆」というワード。
大谷の選択がいかに人のつながりを重視したものだったかが伝わってきます。
彼が求めたのは、大都会でも有利な条件でもなかった。ただ、エンゼルスというチームと心でつながる真の絆があったから。それこそが、彼にとってのすべてだったのです。“What mattered to him most wasn’t market size, time zone or league, but that he felt a true bond with the Angels.”
Embed from Getty Images 2018年
本拠地初戦、3ランホームランを放ちトラウト(右)らから祝福を受ける。
ここで、エンゼルスが決め手となった理由をまとめると、
制度の壁に縛られた格安条件を受け入れ、金額では測れない「絆」を優先した大谷の選択は異質です。
何百億という将来の保証よりも、今この瞬間の情熱を信じた23歳の青年が、
『自分の夢を一番理解してくれ、叶えられそうな場所』を直感で選んだというのは
極めて稀ながらも、
今現在にしっかりとつながる分、なんともドラマチックに映りますね。

